革新的インタフェースの普及
人と機械をつなぐインタフェース技術の革新が続いています。代表例として、音声によるIT機器とのやりとりを可能にしたクラウド提供の音声ユーザインタフェース(UI)サービスと、XR(※2)と総称される人を仮想現実に接続するUI機器があげられます。
音声UIサービスは、当初、音楽サービスを利用するスマートスピーカーに搭載されて普及し、現在では家電製品にも多数搭載されています。音声UIサービスは、大手クラウドベンダからインターネット経由で提供する人工知能、いわゆるクラウドAIが実現します。インターネット検索を始めとする各種サービス、eコマース、旅行、カーシェアリングなど万を超えるサービスと連携します。また各国語対応が進み、世界的な普及も実現しつつあります。
XRの中でも仮想世界への強い没入体験を提供するUI機器であるVR-HMD(ヘッドマウントディスプレイ)はエンタテイメントを中心に普及が進んでいます。VR-HMD機器の仕様が一部で標準化されたこともあり、PCベンダ各社から次々に新製品が発売されています。そして、ビジネス利用も進展しています。VR-HMDを活用した3D共働設計システムは、強力なコンピュータグラフィックで構築した3Dの仮想空間での共働作業を可能にします。3Dの仮想空間の中で、設計、デザイン、シミュレーションを行い、さらには複数人での共働を可能にしました。
またARは手軽なスマートフォンでの利用が拡大しています。アプリケーション開発者にとっては、年間数億台が販売されるスマートフォンが多くの潜在ユーザになる価値は大きいため、多数のアプリケーションソフトウェアが発売され、市場が拡大する、という好循環が生まれています。
透明なUIへの課題
UI開発の究極の目標は、相手がIT機器であることを意識せず、ただ自然に人と接するように利用できることです。IT機器への「働きかけ」と、IT機器から「受け取る」双方において、人と接する場合と差分が無くなること、すなわちUIの透明化です。
人からIT機器への「働きかけ」については解決策が見えてきています。人の音声による呼びかけ、ジェスチャーなどの動き、表情を用いたIT機器への働きかけは、高精度なセンサやAIが支援する音声認識や画像認識技術により現実的になり、今後の精度向上も期待できます。一方でIT機器側から「受け取る」、すなわち人がIT機器の情報を自然に検知する技術は未完成な部分があります。視覚と聴覚の再現技術の進化は著しいですが、味覚や嗅覚、特に大きな役割を果たす触覚については未だ不十分です。
そこで、触覚や味覚を直接再現するのではなく、例えばVR-HMDを活用して視覚から触覚を誘発する研究があります。コントローラを握って手を動かすとその動きに合わせて仮想空間の手が動き、何かを持つと対象の物体が変化する様を体験し続けます。すると人は擬似的に何かを持った感触を持ち、重さまで感じます。このように今あるインタフェースによる感覚操作が、人間感覚の研究により加速すれば、近未来の透明なUIを実現する近道になるかもしれません。
超融合インタフェースの世界
透明なUIを統合した超融合インタフェースを実現した時、課題となるのはUX(User eXperience)の最適化です。そこでは透明UIが追求してきた感覚の完全な再現ではなく、個々人にとっての最適な作業のしやすさを実現するための、最適化された環境が提供されるでしょう。超融合インタフェースの世界では、人々は自分専用の空間でリラックスを得ながら、ITの強力な能力をそうとは知らずに利用して、高い生産性を実現するでしょう。
図:技術トレンド「超融合インタフェース」
- ※1 「NTT DATA Technology Foresight」特設サイト
http://www.nttdata.com/jp/ja/insights/foresight/sp_2018/index.html - ※2 Virtual Reality、Augmented Reality、Mixed Realityの総称