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2020年4月15日事例を知る

CAFISのスマホ決済基盤を活用した「.pay」

東急とNTTデータが共同開発した、カードレスクレジット機能を搭載したハウス型スマホ決済「.pay(ドットペイ)」はマーケットに何をもたらすのか。NTTデータをパートナーに選んでいただいた理由とは。東急株式会社に開発秘話と展望を伺った。

「.pay」を検討した前段として、東急にはどんな課題があったのでしょうか?

東急株式会社 経営企画室 マーケティング・IT推進グループ マーケティング担当 課長補佐 松藤 京介 氏

東急株式会社 経営企画室 マーケティング・IT推進グループ マーケティング担当 課長補佐
松藤 京介 氏

松藤 氏私どもの東急グループには、東急百貨店をはじめとするさまざまなリテール業態がありますが、「施設それぞれの独自スタイルにマッチした販促活動が難しい」という経営課題がありました。そこで、「自社施設が柔軟に顧客と触れあって、施設ならではの販促を積極的に企画できるようにする環境づくり」が急務でした。その手法のひとつとして、従来から東急グループが持っている共通ポイントの基盤「TOKYU POINT」があったのです。しかし、広くマーケットを見渡すと、今や共通ポイント事業はレッドオーシャンであり、簡単に差別化できないことは明白でした。同時に、顧客に対してポイント事業をPRする場が、交通広告などに限られており、1to1で顧客とコミュニケーションをとれるマーケティングが確立できていなかったのです。そこで、この時代ますます重要になる顧客接点になりえるスマホアプリに着目し、「購買行動において必ず通る『決済』という道筋の中にポイント付与やクーポン処理のアクションを組み合わせる」という目標を打ち立てました。このとき、知見を合わせてサービスを検討するパートナーとして一蓮托生の道を歩んでくださったのがNTTデータでした。

一般的には、自社のソリューションを開発する場合、ベンダーやSIerに業務委託としてアウトソーシングするものですが、対等なパートナーシップであるスタンスを選んだのはどういうご理由でしょうか?

東急株式会社 経営企画室 マーケティング・IT推進グループ マーケティング担当 亀田 一誠 氏

東急株式会社 経営企画室 マーケティング・IT推進グループ マーケティング担当
亀田 一誠 氏

亀田 氏「.pay」というネーミングをお伝えすると、「どうして『TOKYU pay』のような自社の冠を付けていないのか」と尋ねられることがあります。その理由は、『.pay』は「東急グループの利益のためだけに開発するものではない」という理念が当初からあったからでした。ドットはピリオドと違い、何かと何かをつなぐときに用いる記号。A社の販促アプリが「A社.pay」という決済アプリになり、あくまで、あまねく商業施設とお客様をつなぐためのもの、というのがネーミングからも伝わってほしいと考えました。つまり、本サービスは、「商業施設をお持ちの日本全国の企業様にとって有益なソリューションにしたい」という考えでスタートさせた、公益性のあるプロジェクトだという考えがあるのです。国内マーケットには「リアル店舗を持つ強みを生かせていない」という悩みを抱える企業様が多くいらっしゃいます。例えば、――ウインドウショッピングで商品を物色し、購入はECサイトから――というように、消費者がECに流れてしまう状況があるのは、本来の販促活動が機能していない最たる証拠でした。

松藤 氏もちろんNTTデータ以外にもパートナーの選択肢はありました。既存のプラットフォームを使うほか、ゼロからスクラッチで開発するなど、あらゆる選択肢を検討してきました。NTTデータにパートナーを打診したのは、元来、鉄道関連事業や東急カードといった各事業面での接点も後ろ盾にはなりましたが、主に3つの理由があってのことです。ひとつは、安定・安全を担保されたセキュリティ機能を有していること。次に、スマホ決済プラットフォーム「CAFIS Pitt」への期待感。そして、リアルタイムのポイント付与が可能なポイント・会員管理ソリューション「CAFIS Explorer」やクラウド型総合決済プラットフォーム「CAFIS Arch」など、「CAFIS」の各種ソリューションを利用することで、導入企業がスムーズに「.pay」対応を進められると考えたから。ただ、こうした理由はあくまで機能的な面であり、一番は、NTTデータが前向きで積極的に未来を創造できるパートナーとしての期待感があったからですね。

具体的には、どのような開発計画だったのでしょうか?

亀田 一誠 氏

NTTデータとともに作り上げた当時を振り返りながら

亀田 氏2016年からサービス検討を開始し、2018年までに試行錯誤期間を経て、2019年11月に新設された渋谷スクランブルスクエアで実装させました。試行錯誤期間のエピソードを語るときりがないのですが、社内テストの段階では、早い段階から「.pay」のポテンシャルを感じることはできていましたね。テストの内容はシンプルで、東急ストアがグループ内の社員向けにお弁当を納入し現金で販売していたのですが、そこに.payを搭載したスマホ決済アプリを導入しました。この実験ではユーザー・販売者の両側面から、商品購入・決済とポイント利用、即時付与が適切にオペレーションするかどうかを確認しました。ここで得られた手ごたえとして大きかったのは、「画面遷移のスピードが圧倒的に早い」ことにユーザー側と販売側双方から驚きの声があがったこと。また、販売したその場でポイントがつくので、ユーザーとしては「明日のお弁当購入ですぐにポイントが使える」ことが一目瞭然でわかり、リピートにつなげることができるわけです。

松藤 京介 氏

松藤 氏決済とポイント付与、そしてクーポン処理をワンアクションで同時に行うことについては、開発チーム全員が高い次元でのこだわりを持っていたので、この手ごたえはすぐに自信になりました。ECの世界では、誰もがクーポンを使い切り、1円でも安く購買できるように動きますが、リアルの世界では、店員にクーポンを提示する行為に恥ずかしさを感じる可能性も否めません。ですので、ポイント付与、クーポン、決済がワンアクションというスピード感、かつ使いやすさについて好意的な声が多く寄せられたことで、このサービスが高い販促効果をもたらすであろうという期待にもなりました。亀田のような世代が中心となってテストとディスカッションを繰り返し、かつシステムのプロであるNTTデータの知見と、僭越ながらサービスを提供する側の我々の知見をうまくミックスできたことで、サービスを磨きあげられたと自負しています。

渋谷スクランブルスクエアでの導入を経て、お客様の反応はいかがでしょうか?

亀田 氏やはりリアルタイムのポイント付与に対する感嘆の声は大きいですね。実際の販促効果や数値の部分では詳細の分析はこれからになってまいりますが、「その日のうちにポイントを付与し使わせることで、購買単価、購買総額を上げていく」という狙いは外れていないと感じています。特に高額な商品をご購入いただくと、まとまったポイントがつくので、次のテナントですぐにポイントを使えるという1日の中での買い回りの効果は確実に出ていると思います。またプッシュ通知の機能もあるので、店頭周辺でチラシを撒くよりも、さらに効率的で効果的なコミュニケーションが図れているということも実際に見て取れます。そして1番大きいのは、施設の自社アプリなので、自分たちが行った販促の効果がすぐに分析できるということです。

NTTデータへの期待も含め、今後の展開についてお聞かせください。

松藤 氏ソリューション全体を俯瞰すると、まだ解決すべき課題は多く残っています。決済とポイントという2つのソリューションを同時提供して終わりではなく、よりスムーズに、より強固に連携させていくことが肝要です。さらにその上で、顧客の基盤をうまくつなげてプラスアルファのサービスと組み合わせ進化させていけるよう、NTTデータとはさらなる連携強化を図りたい考えです。

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