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2026.3.19業界トレンド/展望

グローバル共創が生み出すイノベーションの仕掛けとは

-世界の先進技術を結集したビジネス革新の最前線-

AIが産業構造を再定義する時代、大企業のイノベーション力が再び注目を集めている。生成AIをはじめとする先進技術は、企業のビジネスモデルを根底から覆す可能性を秘めている一方、重要なのは技術そのものではない。世界中の知見を組み合わせ、実装し、価値へと変える仕掛けをどう創るか。そこにこそ競争力の源泉がある。
NTTデータグループ イノベーションセンタ長・古川 洋は、世界11のグローバル拠点を舞台に、「AI×先進技術×共創」から生まれる新たな価値創造に挑んでいる。本稿では、その最前線で生まれた共創事例とともに、イノベーションの核心に踏み込んでいく。
目次

1.イノベーションを起こす仕掛けとは

「イノベーションはスタートアップが起こすものだ、と考えている方は多いのではないでしょうか」(古川)

技術革新統括本部 イノベーション技術部 イノベーションセンタ長
古川 洋

経済学者ヨーゼフ・シュンペーターは、その後期の論文において「大企業組織こそがイノベーションを起こす」と説いている。大企業には変革を継続的に起こす体力があり、社会に大きなインパクトを与えるパワーがあるからだ。

「例えばAppleのユーザーインターフェースの革新も、元を正せば大規模組織の最たる例である米国政府が長年研究開発を進めてきたコア技術がベースにあると言われています。持続的に再現性のあるイノベーションを創出すること。これこそが、我々NTT DATAが目ざす姿です」

図1:NTT DATA Innovation Center

NTT DATAは2022年、先進技術を活用した新規ビジネス創出に取り組む「イノベーションセンタ」を設立した。現在では世界11拠点、約300名の体制で、技術の研究開発だけでなく、顧客との共創によるユースケース開拓とビジネス成果の創出に取り組んでいる。

古川は、同社が注力する技術領域(※1)の中から、「Satellite & Data」「Digital Human」「Digital Twin」「Physical AI」「Agentic AI / GenAI」の5つを挙げ、それぞれの領域における具体的な共創事例を紹介する。

(※1)NTT DATAの技術戦略

https://www.nttdata.com/jp/ja/technology/

2.衛星データが変える「保険」の常識

最初に挙げられたのは、「Satellite & Data」の活用事例だ。昨今、衛星データのコスト低下に伴い、広大な土地の状況把握やドローンの飛行計画など、ビジネスでの実用化が急速に進んでいる。

古川が紹介したのは、欧州の大手損害保険企業との共創事例だ。従来の保険ビジネスでは、加入時の審査でリスクを評価するが、気候変動や都市開発により、そのリスクは経年変化していく。

「これまでは『この建物の近くに崖ができて危ない』といった情報を、人手で収集していました。しかし、高解像度の衛星データとAI解析(※2)を用いることで、資産状況の可視化やリスクの再評価を自動化・高度化することが可能になります」(古川)

現在の解析技術は非常に高度だ。衛星画像から家屋の壁材の状況を確認できるほど、情報を詳細に取得できる。これにより、現地調査を行うことなく、資産の変化を正確にトラッキングすることが可能になった。

図2:ダイナミックな保険リスクモデルによる判断の高度化

このプロジェクトでは、単なる状況把握にとどまらず、将来予測やリアルタイムのアラート機能の実装も検討されている。

「例えばハリケーンが接近した際、ヨットが湾内に停泊している契約者に対し、『危険なので移動させてください』といった通知をリアルタイムに行います。危険を知らせることで、お客さまの資産を守る。そこが保険会社として本当にやりたいことであり、衛星データは、そのための強力な武器となるのです」(古川)

(※2)人工衛星データの合成で高効率のAIモデルの開発へ

https://www.nttdata.com/jp/ja/trends/data-insight/2025/0821/

3.「デジタルヒューマン」が担うITサポートの未来

続いてのテーマは「Digital Human」。AIエージェントに、音声や感情、人間らしい記憶や一貫性を持たせることで、より自然な対話を実現する技術だ。

ここで紹介されたのは、コールセンターやロールプレイといった一般的な用途ではなく、IT運用現場における「Digital Mechanic」というユニークな事例だ。NTT DATAはグローバルで2.5万人以上のサポート要員を抱え、企業のIT資産を管理(※3)しているが、そこにも自動化の波が押し寄せている。

「例えば新入社員が入社した際、AIエージェントと会話をするだけで、『このファイルサーバーへのアクセス権が欲しい』といった承認プロセスを自動で回し、即座に権限を付与する。そんな自動アクティベーション機能を実現しています」(古川)

さらに、物理的なデバイスサポートにも革新が起きている。

「『スマートロッカー』と名付けた端末に、故障したPCを繋ぐだけで、自動的に切り分けを行い、『ここが壊れています』と診断します。さらに裏側では遠隔地のプロフェッショナルと繋がっており、その場で高度な対応も可能です。北米の大手金融機関では、こうしたキオスク型のITサービスによって、支店業務のダウンタイムを最小限に抑えています」(古川)

(※3)デジタルワークプレイスサービス

NTT DATA | Digital Experience Competency

4.製造業のレジリエンスを高める「デジタルツイン」

製造業や都市計画の分野でニーズが高まる「Digital Twin」。現実空間の情報をサイバー空間に再現し、シミュレーションを行うことで、計画の最適化や効率化を図る技術だ。

古川は、製造業の現場で求められているのは「レジリエンス(回復力)」だと指摘する。サプライチェーンの分断や多品種少量生産といった不確実性の中で、常に最適な製造計画を立案し続ける必要があるからだ。

しかし、デジタルツインの実用化には「時間」と「再現性」という2つの大きな壁がある。

「シミュレーションといっても時間は無限ではありません。膨大な組み合わせの中から、いかに短時間で最適解を見つけ出すか。そこで我々は広島大学と共同で『アダプティブ・バルク・サーチ』(※4)という技術を開発しました。これは、答えがありそうな領域に計算リソースを集中させることで、探索時間を劇的に短縮するものです」(古川)

実際、電子基板の穴あけ工程において、ドリルの移動距離を最小化するルート探索にこの技術を適用したところ、約50%の短縮化に成功したという。

もう1つの「再現性の壁」は、異常データの不足だ。品質管理のAIモデルを作ろうとしても、優秀な工場ほど異常が発生しないため、学習データが集まらないのだ。

「そこで我々は『合成データ』に注力しています。発生しにくい異常データを人工的に生成し、それを学習させることで、AIの検知精度を高めるのです。アルゴリズムによって得意な欠陥パターンが異なるため、それらを比較・評価する仕組みも構築しています」

(※4)組合せ最適化問題の計算手法「アダプティブ・バルク・サーチ」の実行環境を無償公開

https://www.nttdata.com/global/ja/news/release/2021/102902/

5.「言葉」と「目」で操作するPhysical AI

「Physical AI」の領域では、認識・判断・行動を統合し、現実世界で自律的に価値を生み出すロボット技術が進化している。NTT DATAは、工場内でのAGV(無人搬送車)やAMR(自律走行搬送ロボット)による搬送自動化、災害時のドローンによる被害状況把握、さらには四足歩行ロボットによる不整地での設備監視など、多様なユースケースを蓄積してきた。

古川が特に注目技術として挙げたのが「VLA(Visual Language Action)」だ。

「これまでのロボットは、厳密なプログラミングが必要でした。しかしVLAでは、『そのボールを取ってください』と言葉で指示するだけで、ロボットがカメラの映像から状況を理解し、自律的にアームを動かして物体を持ち上げます。視覚(Vision)と言語(Language)を行動(Action)に直結させるこの技術は、ロボットの汎用性を飛躍的に高めます」(古川)

図3:視覚に基づくロボットアームの自律操作

NTT DATAでは、ロボットアームと3Dカメラを組み合わせ、VLAを用いたピッキング作業の実証を行っている。また、梱包(パッキング)ロボットメーカーと協業し、NTT DATAの自律走行機能を搭載した次世代ロボットを2026年5月にローンチする予定だという。

6.インドから生まれる「AIネイティブ」な開発

最後に古川が言及したのが、「Agentic AI / GenAI」と、その舞台としての「インド」の重要性だ。

「今、世界中の企業がインドに『GCC(Global Capability Center)』を設立しています。かつてのようなコスト削減目的のアウトソーシング拠点ではなく、AIネイティブな製品開発を行うイノベーションハブとしての役割を担っています」(古川)

なぜ、今インドなのか。古川はその理由を「グリーンフィールド・アプローチ」の取りやすさにあると語る。日本国内のように既存の業務プロセスやシステムによる「しがらみ」がない環境では、ゼロベースでAIを前提とした業務設計が可能になるからだ。

「例えば株式会社デンソー様との共創事例では、インドでソフトウェア開発のPMO(プロジェクトマネジメントオフィス)業務に『Agentic AI(自律型AIエージェント)』を導入しました。進捗管理や品質チェックをAIが主導し、人間はAIの提案を承認・指導する『Co-Pilot(副操縦士)』の役割に専念する。これにより、開発ライフサイクルの大幅な加速に挑戦しています」

図4:共創事例 Agentic AIを活用したネイティブ開発

また、ある企業の研究開発部門においては、AIエージェントが自律的に情報の収集・集約・執筆を行う「リサーチエージェント」の活用も進んでいる。人間は対話を通じて方向性を修正するだけで、高度なリサーチレポートを完成させることを目ざしている。

こうした動きを加速させるため、NTT DATAは「GCCイノベーション推進プログラム」(※5)を提供している。拠点の立ち上げから、タレントの確保、イノベーション文化の醸成までを一気通貫で支援し、インドを単なる開発拠点から「価値創造の戦略拠点」へと進化させる取り組みだ。

(※5)グローバル企業のイノベーション創出を支援する「GCC Innovation推進プログラム」の提供を開始

https://www.nttdata.com/global/ja/news/topics/2025/102400/

7.構想を成果へ。共に仕掛ける未来

今後の展望について古川は「我々イノベーションセンタは、世界中のベストプラクティスを皆さまにお届けし、単なるアイデアで終わらせず、具体的なビジネス成果に結びつけることに全力を注いでいます。ぜひ、次のビジネスを共に仕掛けていきましょう」と語る。

先進技術を起点に、グローバル企業とのパートナーと知見を掛け合わせ、スピーディーに構想から実装へと落とし込む。「先進技術×共創×ビジネス変革」という古川のメッセージは、NTT DATAが描くイノベーションの図式として、AI時代のビジネス変革へ確かな道筋を示すといえるだろう。

本記事は、2026年1月27日に開催されたNTT DATA Foresight Day 2026での講演をもとに構成しています。また、記事内における組織の名称は講演当時のものです。

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