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2026.10.15技術トレンド/展望

物流・製造業の課題を解決するデジタルツインの高度化

人手不足や需要変動、設備の老朽化など、物流・製造業の現場ではさまざまな課題が顕在化している。NTT DATAは、こうした課題の解決に向け、現実空間をデジタル空間に再現し、分析・予測・最適化に活用するデジタルツイン技術の開発・高度化を進めてきた。その一環として今回、現実空間の変化を継続的に捉える3D空間の構築・更新技術を「3D地図オファリング」として体系化するなど、デジタルツインを構成する技術をさらに進化させた。これにより、現実の変化をより的確にデジタル空間へ反映し、シミュレーションや数理最適化と組み合わせることで、物流・製造業における現場の課題解決や意思決定の高度化につなげることが可能となる。本記事では、こうしたデジタルツイン技術の進化と、それによって実現する価値を紹介する。
目次

1.【背景】現実空間の変化を捉え続けるデジタルツインへ

人手不足、需要の急変、設備の老朽化など、物流・製造の現場を取り巻く環境は急速に変化し続けています。限られた時間と人員で生産性を高めながら、変化に応じて迅速に意思決定を行うための手段として、現実空間の状態をデジタル空間に再現し、将来予測や最適化に活用する「デジタルツイン」への期待が高まっています。

デジタルツインの価値は、精巧な3Dモデルを一度構築するだけでは生まれません。より良い意思決定を行うためには、需要、設備やモノの配置、人や車両の動きなど、刻々と変わる現実空間の状態をデジタル空間へ継続的に反映し、現実の変化に追随し続けることが重要です。

NTT DATAは、物流・製造業を中心とする取り組みを通じてデジタルツインの実践知を蓄積してきました。その知見をもとに、現場データの収集から3D空間の構築・更新、シミュレーション・数理最適化、現場へのフィードバックまで、デジタルツインの技術・ケイパビリティを継続的に高度化しています。本記事では、その中でもリアルとバーチャルをつなぐ起点となる3D空間構築・更新技術と、それによって実現する価値や今後の展望を紹介します。

2.【統合空間基盤】実践知をもとに進化するNTT DATAのデジタルツイン

デジタルツインの議論では、3D空間の構築やシミュレーションなどの個別技術に注目が集まりがちです。しかし、実際の業務で重要になるのは、個別の技術そのものではなく、デジタル空間上での検証を現実空間での意思決定につなげることです。そのためには「どの業務課題を、どのような意思決定によって解決するのか」を明確にし、データと要素技術を組み合わせる必要があります。

例えば、工場や倉庫では、人や車両の数や位置、資材や製品の滞留・搬送状況、設備の稼働状態などが刻々と変化しています。こうした現実空間の状況を十分に反映できていない状態でシミュレーションを行うと、算出した計画と実態の間に差が生じ、現場での手戻りや意思決定の精度低下につながります。

NTT DATAは、こうしたデジタルツイン適用におけるさまざまな課題を、数多くのプロジェクトを通じて経験してきました。その実践知をもとに、デジタルツインのあるべき姿を、アーキテクチャ「統合空間基盤」として整理しています。統合空間基盤とは、現実空間からのデータ取得、シミュレーションや数理最適化による分析・予測、現場の意思決定や運用への反映といった流れを体系化したものです。

統合空間基盤は、個別ツールを導入するための仕組みではありません。リアルとバーチャルの間でデータと意思決定を循環させ、継続的に業務価値を創出するためのデジタルツイン基盤です。

現実空間とデジタル空間を統合し、シミュレーションと検証を通じて実行・制御を行うデジタルツインの概念図。

3.【3D地図オファリング】現実空間をデジタル空間へ取り込む3D空間構築・更新技術を高度化

NTT DATAは、統合空間基盤を構成する機能の一つとして、現実空間のデータを統合し、デジタル空間へ取り込む3D空間の構築・更新技術を「3D地図オファリング」として整理・体系化しました。

3D地図オファリングでは、(1)工場や倉庫などの現場から取得したデータをもとに3D空間を構築し、業務横断で利用可能な共通の空間情報として提供します。また、(2)現実空間の人やモノの動き、設備やレイアウトの変化を効率的に反映することで、現実との乖離を抑えたデジタル空間の維持・更新を支援します。

これらの技術により、例えば工場では、人やモビリティの位置や動きを捉えることで、危険行動や接触リスクの検知に活用できます。また、物流倉庫では、荷物や棚を三次元的に捉えることで、荷物の大きさと棚の容量を考慮した配置の検討も可能です。

こうして整備された空間情報は、生産ラインや倉庫運営の改善検討、搬送ルートの設計、設備配置の評価、ロボット導入前の動作検証など、多様なユースケースで活用できます。さらに、(3)シミュレーションや数理最適化と連携することで、デジタルツイン活用の共通基盤としても機能します。

現場画像から3D地図を作成・更新し、対象検知やシミュレーションに活用するプロセス図。
3D地図による設備状態の可視化と施設内の異常検知を示した活用イメージ。

4.【3D空間から広がる価値】統合空間基盤による意思決定の高度化

3D地図オファリングは、統合空間基盤を構成する一つのケイパビリティです。統合空間基盤では、3D空間を起点にシミュレーション、数理最適化、AIなどを連携させることで、より高度な意思決定の実現をめざします。

例えば、生産設備や保管棚の配置変更を検討する際には、3D地図オファリングにより3D空間上で人・モノ・車両の動きを評価し、動線の干渉やボトルネックを事前に把握できます。また、シミュレーションと数理最適化を組み合わせることで、多数の選択肢の中から条件に適した計画を探索し、生産計画や搬送計画、設備投資計画などの検討を支援することもできます。

このように、現実空間の変化をデジタル空間へ取り込み、デジタル空間で分析・予測を行い、その結果を現実空間へ反映する循環を構築することで、デジタルツインは単なる可視化ツールではなく、継続的な意思決定を支える基盤へと進化していきます。

5.【将来の展望】NTT DATAの今後の取り組み

NTT DATAはこれまでも、3D空間構築、シミュレーション、数理最適化、AI、システムインテグレーションなど、デジタルツインを構成するさまざまな技術の研究開発や社会実装に取り組んできました。

今後は、3D地図オファリングを起点として、PLM(製品ライフサイクル管理)やMES(製造実行システム)といった業務システムとの連携を強化するとともに、ロボットや設備制御などの実行系システムとの接続も進めていきます。また、スマートファクトリーやスマートロジスティクスをはじめとする多様なユースケースへの適用を通じて、統合空間基盤を構成するケイパビリティの体系化と高度化を進めます。

デジタルツインの本質は、現実世界を精巧に再現することだけでなく、不確実な環境の中でより良い意思決定を継続的に行う仕組みを構築することです。NTT DATAは、これまで培ってきた技術と実践知を統合しながら、リアルとバーチャルをつなぐ意思決定基盤の実現を通じて、お客さまの業務変革と価値創出に貢献していきます。

3D地図を活用したレイアウト検証、動線シミュレーション、仮想試運転を示すイメージ。

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