第1章:サステナビリティを、グループ全体の経営課題へ
JR東日本グループでは、この2年間で、経営におけるサステナビリティの位置付けがより一層高まっています。環境分野においても、脱炭素に加え、事業活動に伴って発生する廃棄物の削減や再資源化など、資源循環への対応が重要になっています。また、人的資本や地域共創を含め、企業として向き合うテーマは広がっています。さらに、サステナビリティ情報の開示に対する社会的な要請も高まる中、より正確で透明性の高いデータ管理や情報発信の重要性も増していますこうした変化は、社内での関心の高まりにも表れています。サステナビリティに関する制度開示の高度化や投資家・評価機関からの要請の高まりを背景に、経営層においても対応状況や進捗を確認する機会が増えてきました。特定のテーマだけに重点を置くのではなく、社会や企業に求められる変化を捉えながら、サステナブルな経営の実現に向けて幅広く取り組んでいかなければならないと考えています。
また、サステナビリティをJR東日本単体の取り組みにとどめず、グループ全体で進める体制づくりも進んでいます。例えば、各事業本部やグループ会社のサステナビリティ担当者が環境データの収集・入力を担うほか、担当者同士が定期的に集まり、それぞれが抱える悩みや事例を共有する、といった取り組みです。多様な事業を展開するグループだからこそ、各社の状況を共有しながら一体となって取り組むことを重視しています。
社会インフラを担う当グループにとって、サステナビリティへの対応は、事業と切り離して考えられるものではありません。鉄道を安全かつ安定的に運行し、社会に必要なサービスを提供し続けながら、環境負荷をどのように低減していくのか、今、その具体的な方法が問われています。なかでも脱炭素については、自社の事業活動に伴う排出量だけでなく、設備投資や調達を含むサプライチェーン全体を捉え、実効性のある削減につなげていくことが重要です。
第2章:鉄道だからこそ向き合う、資本財由来のScope3
JR東日本グループがGHG排出量の算定を進める中で、鉄道事業ならではの排出構造も明確になってきました。その特徴の一つが、Scope3カテゴリ2「資本財」の排出量が大きいことです。鉄道事業では、車両や駅、線路、電力設備をはじめ、安全・安定輸送を支える多くの設備やインフラを保有し、それらを長期間にわたって使用します。
こうした事業特性から、設備やインフラの整備に伴うGHG排出量は、当グループにおけるScope3排出量の重要な構成要素となっており、その把握・分析が脱炭素推進の重要な前提となっています。一方、社会インフラを担う鉄道事業では、排出量が大きいからといって、設備投資そのものを単純に抑えればよいわけではありません。安全性やサービス品質を維持しながら、社会に必要な交通インフラを将来にわたって支え続けることが重要です。そのため当グループでは、排出量の削減だけを切り離して考えるのではなく、安全・安定輸送を確保しながら、設備の整備や使用も含めたライフサイクル全体で環境負荷を低減していくことが重要だと捉えています。
鉄道という社会インフラをつくり、維持し、長期間使い続けるという事業特性を前提としながら、安全・安定輸送と環境負荷低減をどのように両立していくかが、当グループにとって重要なテーマとなっています。
第3章:グループの排出量を、共通のデータで捉える
JR東日本グループでは、鉄道をはじめ、バスや不動産、生活サービスなど幅広い事業を展開しています。事業が異なれば、GHG排出量の構造も異なります。C-Turtleを活用してグループ各社のデータを継続的に集約する中で、こうした事業ごとの特徴をより客観的に捉えられるようになってきました。例えば、バス事業では燃料使用に伴うScope1、テナント事業では電力使用に伴うScope2など、それぞれの事業特性によって排出量の構成にも違いがあることが見えてきています。
算定業務そのものにも変化がありました。導入以前はExcelを中心にデータを管理していたため、グループ全体のデータ集約や更新履歴の管理に一定の工数を要していました。また、近年は情報開示や第三者保証への対応が求められる中、より効率的かつ確実なデータ管理基盤の必要性が高まっていました。
C-Turtleの導入後は、各事業本部やグループ会社の担当者がシステム上でデータを入力・管理することで、同じ環境で最新の情報を確認できるようになりました。担当者同士が同じ画面を見ながら確認や会話ができることも、グループ全体で算定を進める上での変化の一つです。また、運用を重ねる中でマニュアルの改定やシステムの機能改善も進み、継続的なデータ管理や情報開示を支える環境が整ってきています。
こうして蓄積したデータを、算定だけでなく、その先の情報開示へつなげていくことも今後の重要なテーマです。当グループでは、C-Turtleに蓄積したデータを各種情報開示に活用するとともに、第三者保証(※1)への対応も支えるデータ管理基盤として活用しています。算定から開示まで一貫したデータを活用することで、より正確で透明性の高い情報発信につなげていきたいと考えています。
グループ各社が共通の環境でデータを蓄積・確認する仕組みの構築に向け、当グループでは、C-Turtleを継続的に活用しながら、グループ全体の排出量を継続的かつ一元的に管理するための基盤を整えています。
第4章:データの先へ、サプライヤとともに考えるScope3削減
グループ全体のGHG排出量を把握し、その構造が見えるようになったことで、次に重要になるのが、データを実際の削減へどのようにつなげていくかです。特にScope3の削減には、自社の取り組みだけでなく、さまざまな資材やサービスを提供するサプライヤとの連携が重要になります。
JR東日本グループでは、サプライヤから提供される一次データの活用や、企業ごとの排出量を反映できる総排出量配分方式(※2)にも注目しています。この方式では、サプライヤ自身が排出削減に取り組むことで、その努力を算定結果に反映できます。こうした仕組みを活用することで、企業それぞれの削減努力をより適切に捉え、サプライチェーン全体の取り組みにつなげていくことを期待しています。
一方、サプライヤの脱炭素への取り組み状況は一様ではありません。企業規模や業種だけで決まるものではなく、それぞれの経営方針や取引環境によっても異なります。海外企業との取引などを背景に積極的に取り組む企業がある一方、国内を中心に事業を展開する企業の中にも、グリーン調達や削減目標の設定を自主的に進める企業があります。だからこそ、業種や規模だけで一律に捉えるのではなく、それぞれの企業の状況を理解することが重要だと考えています。
また、実際の調達では、環境価値だけでなく、価格をはじめとするさまざまな条件を踏まえた判断が必要です。環境負荷の低い資材や製品を選択することが望ましくても、それを事業として継続できる形で取り入れていかなければ、持続的な削減にはつながりません。当グループでは、一方的に情報提供や削減を求めるのではなく、調達方針や取引先との対話を通じて、サプライヤとともに実効性のある取り組みを進めていくことが重要だと考えています。排出量の把握を出発点に、サプライヤそれぞれの状況への理解を深めながら、実際の削減につながる方法をともに考えていく。当グループでは、Scope3削減をサプライチェーンに関わる企業とともに進めるテーマとして捉えています。
第5章:データを起点に、持続可能な社会と事業の未来へ
JR東日本グループでは、「ゼロカーボン・チャレンジ2050」の実現に向け、脱炭素への取り組みをさらに進めています。2030年度までに2013年度比50%削減、2035年度までに同60%削減、2040年度までに同73%削減を経て、2050年度のCO₂排出量実質ゼロを目指しています。省エネルギーの推進や再生可能エネルギーの活用拡大、PPA、カーボンクレジット(※3)の活用など、さまざまな施策を組み合わせながら目標達成を目指しています。こうした目標の実現に向け、サステナビリティ戦略委員会のもと、電力や車両、研究開発など各領域で具体的な施策と進捗を確認しながら、グループ横断で取り組みを進めています。大きな目標を掲げるだけでなく、それぞれの事業や専門領域で具体的な取り組みへ落とし込むことで、グループ一体となって推進しています。
また、環境負荷の低減に向けては、脱炭素とあわせて、資源循環の取り組みも進めています。その一例として、駅ビルやエキナカ店舗等から排出された食品廃棄物を「電力」と「農業」でリサイクルする『ダブルリサイクルループ』の取り組みを推進しています。
脱炭素や資源循環の取り組みを着実に進めるためには、現状をデータで正確に捉え、具体的な行動につなげていくことが重要です。GHG排出量の算定・可視化をゴールとするのではなく、そこから見えてきた課題を、事業ごとの削減施策やサプライヤとの連携に結び付けていく。当グループは、グループ各社やさまざまなステークホルダーと連携しながら、持続可能な社会と事業の実現に向けて取り組みを進めていきます。
企業紹介
東日本旅客鉄道株式会社
東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)は、鉄道を中心としたモビリティと生活ソリューションの二軸で事業を展開しています。グループ経営ビジョン「勇翔2034」のもと、二軸の成長とシナジーの創出を通じて、「安心」と「感動」を提供し、すべての人の心豊かな生活の実現をめざしています。また、「ゼロカーボン・チャレンジ2050」を掲げ、グループ全体で持続可能な社会の実現に向けた取組みを推進しています。
【C-Turtle®】の概要資料は、こちらからダウンロードください。


https://www.nttdata.com/jp/ja/lineup/c-turtle/