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2021年2月25日INSIGHT

「ハイブリッドAI」で自動運転の未来に新たな世界を
~新生NTTデータオートモビリジェンス研究所の挑戦~

「百年に一度の大変革期」といわれる自動車産業。自動運転など“CASE”への対応のカギを握るのはソフトウェアだ。その中で、2020年12月、NTTデータグループで組み込みソフト向けツールを提供してきたキャッツ株式会社がNTTデータオートモビリジェンス研究所へと社名を変更した。社名変更にかける想い、今後の戦略を中井CEOと渡辺CTOに聞く。
(※)CASE

次世代の自動車に必要な要素となるConnected(コネクティッド)、Autonomous(自動運転)、Shared & Services(カーシェアリングとサービス)、Electric(電気自動車)の頭文字をとった造語。

“研究所”の社名に込めた想い

――社名変更の背景、目的などを教えてください。

中井デジタル化が自動車産業、交通社会にも及んでいます。自動運転などが一般化する次世代モビリティ社会の実現には、ソフトウェアが重要となるのはいうまでもありません。この対応を加速させるため、私たちはNTTのデータのオートモーティブ領域における“R&Dセンター”となることを目指しています。

代表取締役社長 CEO 中井章文

この思いをこめ、社名を「株式会社NTTデータ オートモビリジェンス研究所(略称:ARC)」へと変更しました。お客さま企業とともにCASE技術の共創を進め、消費者にとって便利で豊かな次世代モビリティ社会の実現に貢献していきたいです。

新たに掲げるミッションは「Digitalize human intelligence, Improve automated mobility」としました。人が持つ高度な知恵を駆使したハイブリッドAIソフトウェア技術を発明・提供することで、消費者が便利で豊かになる次世代モビリティ社会を支える研究者集団となることを目標としています。

具体的な業務は、(1)新技術の企画、国際標準の調査、(2)新技術検証、インテグレーションによるPoC実施、(3)新技術のアーキテクチャー、機能開発などです。最近では、最難関の大学を卒業し、博士号を取り、海外のアカデミア・リサーチ組織で研究してきたハイクラス人材が、面白いことをやれそうだと入社してくれるようになってきています。

“次の時代”に求められる企業へ

――48年の歴史をもつキャッツ社はこれまでどのようなビジネスを展開してきたのですか?

渡辺創業時は、電力会社向けにケーブルとコネクターを製造していました。その後、電力制御がコンピューター化し、ソフトウェアの品質確保が重要な課題となる中、そこに着目し、状態遷移表を用いて抜け漏れのないモデルを作成し、最終的にC言語のコード生成を行うツールを開発しました。これが拡張階層化状態遷移表設計支援ツールZIPC(ジップC)です。

その後、家電のマイコン化や携帯電話の普及、カーナビや自動車など、組み込みソフトウェアの適用領域は拡大を続け、ZIPCも長期間にわたり、さまざまなメーカーの製品開発に使われてきました。ハードメーカーとしてスタートしながらも、時代の変化に対応しソフトウェアベンダーへと姿を変え、2010年NTTデータグループの一員となり現在に至っています。

これまでは、いわゆるツールベンダーを志向してライセンスビジネスを展開してきました。しかしオープンソースが主流の時代に、このビジネスモデルが成立し続けるのか疑問を感じたのです。これからはツールライセンスではなく、IP(知的財産権)を売るNTTデータ オートモビリジェンス研究所として、新たなビジネスモデルを立ち上げていきます。

目指すは“ドライバーそのもの”になる自動運転システム

――自動車関連システムの領域で、注力する研究開発分野は?

中井CASE時代は間違いなく到来します。その時の車は、そのものがマッシブなコンピューター端末または軽量なIoT端末になっていると考えます。クラウドと繋がるなど、デジタルITサービスにおけるクライアントと同じような形になるはずです。こうなると、自動車の主戦場は、動力性能に関わるハードウェアではなくソフトウェアになると考えています。そこに向けての最初の巨大なワークロードが自動運転であり、この領域でスタートアップのような会社規模でもビジネスを拡大できるIPビジネスを展開していきたいと考えています。

代表取締役副社長 CTO 渡辺政彦

――開発している自動運転ソフトウェアとは?

渡辺キーワードは「ドライバーレス」です。運転アシストの進化の先にある自動運転ではなく、“ドライバーそのもの”となり得る自動運転ソフトウェアの開発を目指しています。

熟練ドライバーは運転するときに何を見て、何を考え、その先をどのように予測しているのかをAIに置き換えることで実現できるはずです。例えば、信号機をカメラが認識し車を走らせるだけではなく、もっと深い部分までをAIが判断していくことで、熟練ドライバーと同じような運転が自動化できると考えています。青信号になっても、進んだ先が渋滞だったら進まずに待とうとか、歩行者や、自転車などの飛び出しリスクがないかどうかなど、さまざざまな事を熟練ドライバーは予測しています。これが開発のポイントになります。

また、安全運転の領域だけではなく、さらに乗り心地や楽しさをプラスさせることも可能でしょう。急ブレーキを踏まない、天候や時間に余裕があれば美しい景色の道を走るなど、ただ目的地へ行くだけではなく、快適性と喜びを与えたり、痒いところに手が届く自動運転の方が良いに決まっています。

――その自動運転システムで必要となるAIとは

渡辺取り組んでいるのはハイブリッドAIです。これは、ディープラーニングのようなデータに基づく、統計・確定的な手法を用いたデータ駆動型AIと、人が持つ知識をモデルなどで表現する理論知識型AIを統合したAIのことです。人の脳は右脳と左脳があり、それを脳梁がつないでいます。これと同じ様に、2つのAIをつないでシステムに埋め込むことで、人と協働できるAIが実現できるという考えです。

開発ソフト搭載の試作車を作りたい

――新社名の下で今後の事業展開にかける想いを聞かせてください。

中井誤解しないようにしてほしいのですが、リアルな車を作ってみたい夢があります。自動車メーカーになりたいという意味ではなく、私たちの開発したソフトウェアがリアルな世界で役に立つこと、“本物”であることを、実際の自動車を走らせることで証明したいという意味です。

最近、自動運転AIチャレンジという、自動車メーカーや部品メーカーも参加する、コンピューター内で自動運転の技能を競う競技会で優勝をしました。次はラスベガスで開催される展示会などで私たちのハイブリッドAIを搭載した実車を出展し、“確かにこのソフトウェアなら間違いない”ということを知ってもらえると最高だなと思っています。そして、バーチャルの世界で生まれたハイブリッドAIソフトとリアルな自動車との融合から、ハードウェアとしての自動車にも新たな姿を見出せるのではないかと期待しています。

渡辺CASEのうち自動運転システム分野でトップを走る研究者集団になることを一番に掲げていきます。そのための取り組みとして、自動運転システムを正しく検証するための方式・方法であるメソッドとプラットフォームを確立していく。もうひとつとして、システムを正しく監視できる仕組みを作り上げていくことです。ターゲットは明確に定まっています。

会社概要

株式会社 NTTデータ オートモビリジェンス研究所
創立=1973年11月14日
資本金=3億6800万円
事業内容=次世代モビリティに必要なソフトウェア技術の研究開発
MBD、数理、AIソリューション、ツール開発・販売など
本社所在地=横浜市港北区新横浜3-1-9アリーナタワー3F
URL:https://www.zipc.com/jp/

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