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2021年3月2日INSIGHT

連載:The Future of Food 2030(7)
~デジタル・データ活用で進化する食ビジネス~

テクノロジーやデータを活用することで、私たちの食の未来はどう変わるのか?2020年11月に開催された『第2回日経フードテックカンファレンス』において、早稲田大学大学院の入山章栄教授とNTTデータ常務執行役員の佐々木裕が対談を行った。消費者の嗜好に合わせた食の提供と健康づくりに必要な技術と課題、そして将来像について話し合った内容を要約してお伝えする。

テーマ(1)食と健康のパーソナライゼーション
―フリクションレスなデータ収集がカギ―

佐々木最近、食と健康という2つの領域がリンクし始めており、双方の領域で「パーソナライゼーション」というキーワードが出てきました。消費者の属性や好みを分析し、それに合わせて健康によい最適な食を提供するという試みです。健康領域の方が個人差を綿密に分析できることから、これから数年間は健康サイドのパーソナライゼーションが食を引っ張っていくのではないかと考えていますが、入山先生はどのようにお考えでしょうか?

図1:食と健康のパーソナライゼーション

図1:食と健康のパーソナライゼーション

入山教授その通りだと思います。これからはwell-being(=幸せ+健康)がキーワードとなってくる。そこでは、2つのポイントがあります。1つ目は、どうやって個人のデータを取るか。データを取る面倒くささと共に、プライバシーの問題があります。もうひとつは、パーソナライズされた食をお勧めしても、それを本当に食べてくれるのかという、リコメンデーションの問題です。たとえば、化粧品業界ではパーソナライゼーションが進んでいますが、AIが分析を行っても、最終的には人がお客様におすすめをしている。どこまでをデジタル化させるのかが重要かもしれません。

佐々木すべてプログラム化され、今日はこれ、明日はあれを食べなさいと言われるのは確かに窮屈な話になりますね。それがおいしくなければそもそも食欲がそそられないので、健康のためにどう食をつくっていくかは課題が多い。また、1つ目にあげて頂いた「どのように個人のデータを取るか」に関しても、毎日体重計に乗ることすらハードルに感じる方が多いでしょう。

入山教授最近、アップルウォッチを買ってみましたが、私のようなずぼらな性格だとどうしても長続きがしない。体に関するデータをどう取るかは大きな問題だと思います。

佐々木データ収集には技術の進化が必要ですね。今のデバイスは「ウエアラブル」と呼ばれるものですが、その次にくるのが「インプランタブル」という小さなセンサーを体内に埋め込むタイプ。スマートフォンにデータを飛ばし、生活に支障が起きないような形でデータを収集できます。ほかに「フリクションレス」(※)というキーワードがあり、NTTデータではたとえば、鏡の前に立つだけでデータが取れるといった実証実験を始めています。

(※)

消費者が簡単に、負担なくデータを提供できる仕組みや技術。

テーマ(2)知の探索における技術の組み合わせ
―想定外の相関関係から生まれるイノベーション―

佐々木入山先生は、イノベーションには「知の深化」と「知の探索」の二軸が重要であるとお話されていました。ここからは、「知の探索」について議論を進めていきたいと思います。
知の探索とは、まだつながっていない技術の組み合わせから生まれるものと理解していますが、横軸に業界、縦軸に時間を置いて、技術の組み合わせを考えてみました。(図2)
たとえば海外では、3Dプリンターを活用しパーソナライズされたビタミンサプリメントをD2C(ダイレクト・ツー・コンシューマー)で提供してEC決済する事例が見られます。3Dプリンターという機械の技術、EC・決済といったITの技術が、既存の食産業技術と組み合わさった、新たなビジネスモデルといえるでしょう。
以前からある技術であっても、新しい技術と掛け合わせることでイノベーションが起きる。足元の技術をもう一度見直してみることも必要だと考えています。

図2:技術の組み合わせ事例

図2:技術の組み合わせ事例

入山教授技術の掛け合わせは、とても重要です。今までは産業別の縦割りだったので変革が起きにくかったですが、横につないで掛け合わせを試していくことが大切だと思います。中でもD2Cはフードテックの重要なポイントであり、そこには物流や金融もうまくからめていく必要があるのではないでしょうか。

佐々木最近では企業のデータ活用も進み、企業は工場や営業などに分散したデータをデータレイクという形で統合し、最適なデータ分析の環境を整えています。仕組みを作り、データをうまく活用することで見つかる「想定外の相関関係」もあるでしょう。
オープンデータを組み合わせることで、需要の予測精度を高めたり、サイロ化したデータをつないでみたら想定外のことがわかったり、といったケースも出てきています。これらも、知の探索と言えるのではないでしょうか。

図3:データ活用による”想定外の相関関係”の探索

図3:データ活用による“想定外の相関関係”の探索

テーマ(3)フードテックの未来とは
―日本におけるフードテックビジネスの可能性―

佐々木2030年の食の未来はどうなっていくでしょうか?食ビジネスを取り囲む業界と、関連する技術キーワードを整理してみました。
ヘルスケア業界に関連しては、より高度なウェアラブルデバイスやインプランタブルデバイスが出現するでしょう。農業領域では、都心に近いところでも野菜の収穫ができるバーティカルファーミングが実現し、家庭までのサプライチェーンなども高度化していることが想定されます。家庭におけるキッチンも、自動調理ロボットが活躍しているかもしれません。(図4)
そして、これら技術を束ねる情報プラットフォームが出現し、業界と業界の融合が進み、我々の食に関わる生活をより便利に、より健康にサポートしてくれると考えています。(図5)
入山先生は、食の未来をどのように考えていますか?

図4:2030年の食の未来

図4:2030年の食の未来(1)

図5:2030年の食の未来

図5:2030年の食の未来(2)

入山教授“ITデジタル競争”の第1回戦は、残念ながら日本は米国に負けました。まったくの更地にパソコンやスマホが登場し、それらを利用してGAFAがうまくビジネスモデルを構築したからです。しかし、第2回戦は日本にチャンスがあると思っています。デジタルツールが行き渡った今、モノとサービスが強くなければ仕方がない。今でも日本のモノとサービスの質の高さは世界で定評があり、そこにチャンスがあるはずです。そういう意味で、日本のフードテックの未来には期待しています。

最後に

佐々木フードテックというキーワードは海外から流れ込んできたものですが、我々が持っている技術と食へのこだわりを、フードテックと組み合わせることにより、日本はもちろんのこと、世界の人々の口を満足させたいと思っています。さらに健康づくりにも貢献できるサービスや仕組みを提供していきます。 本日はありがとうございました。

※こちらから対談の動画をご覧いただけます

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