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2022.5.2トレンドを知る

災害にデータで立ち向かう!
―災害対応力を進化させる防災情報の活用―

昨今、地震や風水害などの災害が頻発、広域化しており、行政・企業など各組織が防災・災害情報を広く共有し、迅速・的確に対応することが求められている。その一助となるのが、防災科学技術研究所の基盤的防災情報流通ネットワーク『SIP4D』やNTTデータの『防災情報プラットフォームD-Resilio®』だ。本稿では、防災IT政策推進の第一人者、臼田裕一郎氏と防災情報の活用に必要な仕組み、心構えなどを紐解く。

目次

災害時の意志決定には複数のデータを重ね合わせることが有効

国立研究開発法人 防災科学技術研究所、通称「防災科研」は、あらゆる自然災害を対象に、予測・予防、応急対応、復旧・復興といった基礎研究に取り組んでいる。総合防災情報センター長の臼田氏が携わるのは、「災害時の情報共有の研究」だ。

防災科学技術研究所 総合防災情報センター長 臼田 裕一郎 氏

防災科学技術研究所 総合防災情報センター長
臼田 裕一郎 氏

災害が発生すると、県、国、市町村、企業、個人が、同時並行で活動を始める。基本的にはそれぞれが持っている情報をもとに活動しており、認識相違が起きやすく、その結果活動の重なりや欠落が起こってしまう。そういった事態を避けるために会議で状況の共有を行うのだが、その場合、現場に状況が伝わらないといった問題もあるという。

では、どのような形が理想なのか。臼田氏は、「それぞれの組織が同時並行で活動しつつ同じ情報を持つことで、状況認識が統一され、全体最適な災害対応ができます」と語る。そのために、研究開発を進めているのが『SIP4D』(基盤的防災情報流通ネットワーク)だ。

『SIP4D』は、各機関同士と現場をつなぐ「パイプライン」。各組織が持つ情報収集のシステムをつなぐことで情報が流れ、他の組織と共有が可能になる。また、各々から情報を集約し、運用支援をするために『ISUT』(災害時情報集約支援チーム)も立ち上げている。システムと人、同時に開発を進めているのだ。

図1:SIP4Dで共有される様々なデータ

図1:SIP4Dで共有される様々なデータ

『SIP4D』に集まる情報は多岐に渡る。代表的なものでは、人工衛星画像を使った被害の解析、様々な観測機器による観測データ、避難所の分布と避難者数、現場から上がってきた被害情報、通信会社の通信障害情報、電力会社の停電情報、ガス・水道の復旧情報、道路の規制情報などがあり、災害対策本部を始めとして、DMAT(災害派遣医療チーム)や自衛隊のブースでも同じ画面、情報が共有される。

「複数の情報を重ね合わせて、意志決定に役立てます。例えば、避難所・避難者数の分布にガスの復旧情報を重ね合わせれば、どこに入浴支援が必要なのかがわかる。また、病院を支援するチームは病床の状況だけでなく、その地区の給水や電力の復旧状況、病院までの道路の規制などを重ね合わせることで、ルートの選択や意志決定もスムーズになります」(臼田氏)

『SIP4D』が秀逸なのは、災害対策本部や各組織本部だけでなく、断水状況や通信状況などの一部情報を一般にも開放していることだ。災害が発生すると『防災クロスビュー』(※)というwebサイトが立ち上がるので、ぜひ、覚えておいて欲しい。

(※)防災クロスビュー

bosaiXviewは、平常時は過去の記録や現在の観測、未来の災害リスク。災害時は発生状況、進行状況、復旧状況、関連する過去の災害、二次災害発生リスクなどの災害情報を重ね合わせて(クロスさせて)、災害の全体を見通し(view)、予防・対応・回復を通じて活用できるシステムを目指しています。
https://xview.bosai.go.jp/

防災版『デジタルツイン』が生み出す災害対策

現状の情報共有だけでなく、更に未来の防災を見据えている臼田氏。「共有される情報をどう使えば、よりレジリエンスを高めて、災害対応を効果的に進められるのか」を模索しているという。その解のひとつが『CPS4D(Cyber-Physical Synthesis for Disaster Resilience)』という概念だ。

図2:CPS4Dの全体像

図2:CPS4Dの全体像

「『CPS4D』は、防災版の『デジタルツイン』。簡単に説明すると、フィジカル空間の情報を大量にサイバー空間に集めて解析して、フィジカル空間に対してより良い答を出していく考え方です。よく『フィードバック』という言葉が使われますが、我々は『フィードフォワード』という言葉で2018年から研究を開始しました。災害対応過程を常時観測・予測し、予測情報に基づき先手を打つプロアクティブな仕組みを目指しています」(臼田氏)

『CPS4D』で集めるフィジカル空間の情報には、自然動態だけでなく社会動態も必要だ。両方を組み合わせることで、災害検知や被害推定がより正確になる。防災科研では、これを「災害動態」と呼んでいる。この災害動態を知る手段のひとつとして開発しているのが、防災チャットボット『SOCDA』である。いわゆる対話型ロボットで、個人とAIの対話から被害やニーズを自動分類して、全体として把握する。すでに福島県のとある市で導入されており、興味深い事例があったという。

「2021年2月、それほど規模が大きくない地震が発生しました。『SIP4D』に入ってきた建物の被害推定や断水情報は“被害なし”。しかし、『SOCDA』を使っていた市民の話を自動分類すると、水は出ているけれど濁っていて使えない、といった被害を把握できました。一人ひとりの情報を集約することで、公式情報からは見えてこない細かい情報を把握する可能性に迫る事例となりました」(臼田氏)

NTTデータと防災科研の取り組みは、相互補完関係にある

第二公共事業本部 第四公共事業部 第二統括部長 中村 秀之

第二公共事業本部 第四公共事業部 第二統括部長
中村 秀之

臼田氏の話を受けた中村は、「個人・組織同士が情報を共有し、状況認識を統一することで全体最適な災害対応を実行するという部分が印象的です。これに対応するには、様々なソリューションを組み合わせていく必要があります」と感想を述べる。その実現のために、NTTデータが進めている取り組みが『D-Resilio』だ。

図3:デジタル防災プラットフォーム「D-Resilio」

図3:デジタル防災プラットフォーム「D-Resilio」

「『D-Resilio』は、NTTデータグループのデジタルに関わる危機管理、防災ソリューションの統一ブランドです。各ソリューションを連結させ、なめらかな情報流通を実現。企業間連携や業界横断、官民連携などを実現し、協調領域を最大化して、災害対応力を進化させます」(中村)

防災ソリューションのなかには、NTTデータのグループ企業で気象情報を提供する『HALEX(ハレックス)』や世界最高精度のデジタル3D地図サービスを提供する『AW3D』からのデータ、ドローンからの映像、SNSや河川・道路情報などからの情報などが含まれるという。これらを有機的に連動させ、災害に柔軟な対応ができる仕組みを目指している。

「広域化していく災害に対して、単一の対策本部で対応するのは非常に厳しい状況です。都道府県や市区町村、あるいは民間の電力会社、通信会社などが、災害に対応してデータ・サービス連携をするなかで、一体となって対応できる環境が必要です」と続けた。

この、「一体となった対応」が、『D-Resilio』の根本的な考え方だ。それは、防災科研が目指す姿とも重なる。

「日本全体のレジリエンスを高めるために、つなぎ合わせる必要のあるプラットフォームが数多く存在しています。その代表格が『SIP4D』で、災害対応において欠かせない情報ソースだと認識しています。『D-Resilio』も、そこにつなぎ合わせるプラットフォームのひとつでありたい。NTTデータと防災科研の取り組みは相互補完関係にあると思っています」(中村)

その言葉通り、『D-Resilio』を各インフラ企業や地方自治体に提案する際には、必ず『SIP4D』との連携を前提に話をしているという。

「その際、自治体毎に『SIP4D』の対応に関して少し濃淡があると感じる」と語る中村。臼田氏も「『SIP4D』は研究開発からスタートしており、実務とは大きな乖離があることも事実。国が一体となり進めていくといった、大きな方向性を打ち出すことが非常に重要です」と言葉を継いだ。

災害時の業務の約8割が「標準化」可能

その大きな方向性を示すひとつが、2021年5月に国から発表された「防災・減災、国土強靱化新時代の実現のための提言」だ。その一部である「デジタル・防災技術WG」(WG=ワーキンググループ:有識者会議)で取り上げられている提言に、「防災デジタルプラットフォームの構築」がある。臼田氏は、この取り組みについて、こう語る。

「防災における先端技術といえば、防災アプリやリアルタイムの氾濫予測といった、個別のアプリケーションに目が行きがちです。しかし、アプリケーションが単独で存在しても、全体が上手く回っていかない。有効なアプリケーションを生かすためにも、そこに流れてくる情報のインフラをしっかりと構築する必要があります。それが、防災デジタルプラットフォームの構築の意義。アプリケーションが花であり実であるなら、幹や根っことなる防災デジタルプラットフォームが重要だと考えています」(臼田氏)

また、防災デジタルプラットフォームに集約するデータも、現在、主流である自治体職員の手打ち入力から自動入力へと進化させる必要がある。それを可能にするのが、前述したドローンや衛星などを活用した情報収集だ。「デジタル・防災技術WG」では、「防災IoTの構築」として提言されている。

臼田氏は「情報だけでなく業務そのものが標準化されなければ、災害対策はうまく回りません」と指摘する。実際に災害が起こると、様々な業務が発生する。しかし、その内容を分析すると、約8割は、どんな災害にも共通した「繰り返す課題」から発生する業務だという。つまり、この繰り返す課題に関しては標準化が可能で、担当が誰であっても対応ができるということだ。その上で、残り2割の「新しく発生する個別の課題」に、重要なリソースを集中しなくてはならない。

しかし、実情は約1,800ある地方自治体が、約8割の繰り返す課題にも個別で独自に対応しているという。「これでは、広域に跨がる大規模災害には対応できません」と臼田氏。過日、トンガで海底火山が噴火して、津波の注意喚起を行う緊急速報メールが送信された件に触れた。

「この際も、メールが多すぎると非難された自治体もあれば、そもそもメール自体を出さない自治体もありました。メールの中身も、津波注意報が発令された事実だけを伝えるものから避難場所まで記載したものまで様々。情報の発信方法も基準も内容も、自治体によって全く違います。自治体により情報の発信方法や基準、内容が異なれば、個人の対応も難しくなります。特に、様々な自治体に工場や支社を持つ企業は、マネジメントに頭を悩ますことになるでしょう」(臼田氏)

臼田氏は「全てを自治体が個別対応するのは難しい。どこまでを標準化して、どこから先を地域や組織の特性に合わせて個別化するか、その判断が重要です。それ自体を企業としてプラスのサービスにしていくといった発想もあるのではないでしょうか」と解決策を提示した。

“つなげる・つながる”防災の仕組みをつくる

これからの災害対策において、臼田氏が期待するのは、「官民連携」「民民連携」だ。

図4:標準化の必要性と官民連携・民民連携への期待

図4:標準化の必要性と官民連携・民民連携への期待

この「官民連携」「民民連携」について中村は、「広域化、複雑化する災害の対応において、災害の対象エリアや規模、種別は様々です。状況に応じて、バーチャルに対策本部がつながる、あるいは横断的に対応することを可能にしていく環境を作らないといけない。そのためには、あらゆる情報が柔軟にクロスして、必要に応じて取得できる仕組みを官民連携しながら実現することが重要。民民連携でも、協調と共創をよく考えて、全体のアーキテクチャーの設計、構想を進めていきたいと思います」と応えた。

ハイレジリエンス社会の実現に向けて、どういった防災情報の流通と活用が必要なのか。示唆に富んだ対談を終えて中村は、このような感想を述べて話を締めた。

「共通するインターフェイスや災害情報の標準化といった、全体最適に必要な取り組みは、NTTデータグループとしてしっかりと応えていきたい。様々な自治体や企業で個別のシステムを構築してきた責任の一端は、我々、ITベンダーにあると考えています。災害情報の標準化、そして、“つなげる・つながる”においても、しっかり答を出していきたいと思います」(中村)

本記事は、2022年1月27日、28日に開催されたNTT DATA Innovation Conference 2022での講演をもとに構成しています。

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