人工知能(AI)とは
人工知能(AI)とは、実態からは「人が実現する機能を人工的に再現するもの」「人の機能を人工的に増大させるもの」と表現できると考えられますが、一意に決まった定義というものがなく、古くから様々な立場で論じられ続けている領域です。突詰めようとすると「知能とは何か?」「人間とは何か?」といった哲学的な質問への解も含めて探求・定義することになってしまうこと、また研究領域が非常に広く様々な内容・課題が包含されていることが定義しにくい要因ではないかと考えられます。
ここではAIについて、「技術」というよりは「適用」、つまり「ビジネスでの情報活用」の領域にフォーカスして考えてみたいと思います。
「AI」にこめられた期待感
AIをビジネスインテリジェンス、ビジネスアナリティクスといった「情報活用技術」の一つと位置づけ、「ビジネス上での期待感」という軸で整理してみましょう。企業の一般的なビジネスプロセスを大まかに「現状把握」「課題抽出」「施策実行(意思決定)」「モニタリング」と分けて捉えてみます。これまでの情報活用の期待の多くは、「現状把握」領域において状況を見える化することや、「課題抽出」プロセスにおいて大量のデータの中に隠れた原因・ルールなどを発見することでした。
ですが徐々に「ユーザの行動に即したレコメンド機能を組み込む」「製品の利用状況に応じた異常の予兆検知機能を製造ラインに組み込む」「交通量予測・制御にシミュレーション機能を組み込む」といった使い方など、「施策実行(意思決定)」プロセスでの期待が増加しています。つまり「見える化・発見から実行・意思決定へ」と期待感が拡大し、業務への組み込み度合いも強くなってきているのです。その結果として「自動化」「自律化」といったキーワードが必要な要件として語られるようになってきました。
人工知能が改めて脚光を浴びた大きなきっかけは、深層学習(Deep Learning)を始めとする機械学習技術の発展で認識技術が飛躍的に精度向上するなど、「技術としてのAI」によるところが大きいと思います。しかし一方で、かねてからオペレーショナルな領域に対する情報活用ニーズの高まりがあり、「自動化」「自律化」といった課題解決への期待感が「ビジネス上のAIニーズ」として語られるケースが多くなってきました。
この文脈では、画像やテキストの認識精度、特徴量抽出の効率化といった今回のAIブームを支える技術の高度化や先進性については、実は重要視されていないのが特徴です。そのためこれらの「ビジネス上のAIニーズ」を解決するためにはAI技術に加え、また別の解決策が必要となります。
ビジネスの「自動化」「自律化」に向けて
現在では高度分析の仕組みである「機械学習フレームワーク」が様々なベンダから提供されており、これらを組み込んでビジネスの「自動化」「自律化」を実践する企業が増えています。NTTデータがご支援させていただいている実績から、業務適用に向けた重要なポイントを以下にまとめています。これらの点に留意し適切な初期検討、実証を行うことで、本格導入の際のリスクを低減することが可能です。(図1)
ポイント1.業務「情報活用の利用シーン、シナリオの明確化」
どういった業務のどのシーンで情報活用の取り組みを行うかを整理します。5W1Hをどれだけ明確化できるかが重要です。投資対効果を図るKPI設定の柱となる項目にもなります。
ポイント2.組織・体制「自動化、自律化ポリシーの策定」
「業務のどの部分を、どの程度自動化、自律化すべきなのか?」について整理し、優先度をつけます。「自社として最終的に譲れない部分はどこなのか?」を明確にすることが重要です。また、業務全体を遂行する人的体制とセットで業務遂行パターンを検討する必要がある項目です。
ポイント3.分析技術・基盤「適切な分析・業務適用製品、仕組みの選定」
適切な機械学習フレームワークや仕組みを選定します。機械学習フレームワークは便利ですが、必要とする人的スキル、分析的及びシステム的なカバー範囲、方式はそれぞれ異なるのが実情です。「どういった製品、サービスとその組合せを選ぶべきか?」は上述の1.2.の整理状況を含めて判断する必要があります。利用シーンによっては機械学習フレームワークだけでは不十分で、自律化を支える仕組みとセットで考えるべき場合もあります。
まとめ
「AI」というキーワードをきっかけに、オペレーショナルな領域の情報活用が急速に進展しようとしています。NTTデータでは、情報活用の専門家、情報活用ソリューションを軸に、「技術としてのAI」の領域はもちろん「業務としてのAI」の領域も含め、企業の情報活用による新たな価値創出をご支援しています。