NTTデータのマーケティングDXメディア『デジマイズム』に掲載されていた記事から、新規事業やデジタルマーケティング、DXに携わるみなさまの課題解決のヒントになる情報を発信します。
(執筆者紹介)
柴田 さゆり
株式会社NTTデータ ITサービス・ペイメント事業本部 SDDX事業部
マーケティングデザイン統括部 デジタルマーケティング担当 主任
学生時代にスポーツ社会学を専攻し、複数のスポーツイベントでのアンケート設計からフィールドワーク、分析を経験。現在はマーケティングオートメーションツールのデリバリ担当に従事。
STEP1:何を達成したい?まずはアンケートの目的を明文化!
まずアンケートを作成する際に陥りやすい罠は、設問からどんどん考えてしまい、アンケート結果を取りまとめるときにどうまとめるか悩む、という罠です。この罠に陥らないために、まずアンケートを取る目的を決め、関係者と認識をすり合わせておくことが重要です。
何を知りたいのか、を考えるのではなく、何を達成させるために何を知りたいのか、というアンケート実施の目的を固めます。
例として、デジマイズム読者に向けたアンケートの実例で、具体的に考えてみましょう。デジマイズム編集部員は読者が読みたい記事を増やしたい、記事のコンセプトが達成できているのか知りたいという考えがありました。そのため、この考えに対応した目的を以下3つ設定しました。この3つの目的を達成させるためのアンケート設問をSTEP2以降で作成していきます。
▼例:デジマイズム読者アンケートを取る目的
①要望確認:読者が求める記事がなにかを知る
②効果測定:「お悩み解決メディア」というコンセプトを達成できているかを知る
③属性の把握:読者行動を知りたい。①②の分析軸として活用する
STEP2:目的から設問を考える、回答者の負担を減らす
STEP1で目的を固めた後、いよいよアンケートを作成します。アンケートを構成する内容としては、アンケートの案内文・設問・選択肢とありますが、今回は設問の作成にフォーカスして説明します。
設問作成においては、目的を達成するために必要な情報を収集できる設問になっているかを考えなくてはなりません。目的から設問を考えるための一つの方法としては、目的①に対応する設問として設問①-1・設問①-2など通番を振ると、設問それぞれが目的に対応していることをチェックしながら作成できるため、記載方法としてお勧めです。
目的と対応させるアンケート設問の作り方
加えて、重要となることが2点あります。回答者が理解しやすく、かつ負担のない設問数や選択肢数とすること(特に無償などインセンティブが無い・少ない場合)と、設問を見て回答者全てが同じ解釈になるようにすること、の2点です。
設問数が多く、設問が理解しづらい内容では回答者に負担がかかります。回答者が負担を感じ、回答を面倒に思ってしまうと本心と乖離した回答になってしまう可能性が高くなります。
過去実施したデジマイズム読者アンケートでは、よく見るWebメディアを聞く設問を用意しましたが、仮にこの回答の選択肢が30個あったらどうなるでしょうか。最初の10個は本心で答えてくれるかもしれません。しかし、11個目の選択肢で飽きてしまい、以降の選択肢を見ずに飛ばして次の設問に進むということも十分にあり得ます。回答者に負担を与えることは、回答者にとってもマイナスですが、アンケート作成者にとっても正確な回答を得られないというマイナスが生まれます。
同じ解釈となるようにする理由については、解釈違いが回答者の間で生まれてしまった場合、同じ思いを持っている人でも回答が異なる結果となる可能性があります。
これもデジマイズム読者アンケ―トの実例で考えてみましょう。デジマイズムを読む動機を知りたいと考え、「あなたはどのような時にデジマイズムにアクセスしますか」という設問を作成しました。しかし、この設問だけでは通勤時といったアクセスするタイミングを答える人もいるのではないでしょうか。目的を達成させるために設問を作成しても、別の解釈が可能な設問だと、意図した回答が得られない可能性があります。
解釈違いを生まないための一つのコツとしては、解釈してほしい意図を選択肢として予め用意することです。設問はそのまま「あなたはどのような時にデジマイズムにアクセスしますか」としても、選択肢として、「メールマガジンで見たい記事があった時」、「情報収集をしたい時」等と用意します。仮に回答者が設問だけ読み、読むタイミングを聞かれていると解釈してもしておけば、選択肢を見れば読む動機を聞かれていると認識を改めることができます。
STEP3:文言をブラッシュアップ!レビューをフル活用
STEP2を経てアンケートが出来上がりました!しかし、このまま回答者に依頼するのではなく、社内の協力者にアンケートを配布し、テスト回答とレビューを依頼しましょう。
レビューの観点としては、答えづらさや誤字など理解しづらい点がないかという一般的な観点もあれば、STEP2で述べたように負担感のない回答時間に収められるか確認するために時間計測を行うことと、同じ意図で受け取られるかを確認するためにそれぞれの回答意図をヒアリングすること、などを行います。
アンケートでは多数の人が同じ解釈をすることをめざす必要があるので、周囲の人の力をフル活用しましょう。回答予定者の数にもよりますが、可能な限りアンケートの回答者と近い属性の人物3名以上にレビューしてもらうことをお勧めします。
では、どれだけレビューに効果があるのでしょうか?例として、STEP2を経て個人で作成した読者アンケートと、STEP3のレビューを経て修正した読者アンケートの2つを下記URLで紹介します。
レビュー前(STEP2後):https://forms.office.com/r/MJ0pnpbefp
レビュー後(STEP3後):https://forms.office.com/r/ihHdJNxhiW
レビュー前後の設問文比較
上記を比べてみると、理解のしやすさに差がありませんか?同じ意図の設問ですが、レビュー後は設問も短くなり理解しやすくなったかと思います。
レビューを経ることにより、作成者自身が理解しやすいと思い記載した内容が、実は多数の回答者からすると理解しづらい内容であったなど気づきを得ることができます。
例えば、STEP2では、アンケート作成者が意識したところとして、設問の主語を統一させること(誰が主語であるかを示し、解釈の違いを起こさせないようにする)というアンケート設計のお作法に則りアンケートを作成していました。しかし、STEP3のレビューを経て、主語がなくても複数人に意味が通じると分かったため、主語は削除しました。
作成者一人では得られなかった気づきでもあり、複数人に意味が通じる設問かは一人で判断できないことのため、レビューを経て初めて主語を削除するという判断することができました。
まとめ:3STEPでアンケートを作成してみよう
本記事では、アンケートの作成方法を3STEPで解説しました。
顧客などの周りや社内の声を聞きたい集めたい時、アンケートを作成する時には今回の3STEPをぜひ思い出してください。いざアンケートを作るとなると一言一句の言葉使いや、知りたい情報が取れるのか、など悩みも出てくると思います。多数の人を回答対象とするアンケートだからこそ、複数人にレビューを求めて1人で悩まないことが重要と思います。
また、今後アンケート回答する際には、どのような目的でこのアンケートが作られているのか?という視点で見ると、アンケート作成者の狙いが読めてきて面白いかもしれません。ぜひご自身でもアンケート作成にチャレンジいただき、直接ユーザーの声を聞いてみましょう。