1.エッジコンピューティングとは?
コロナ渦以降、商業施設やオフィスでは体温を測定する機器の設置が増加しており、一度は体験したことがある方も多いのではないでしょうか?この体温測定装置を例にエッジコンピューティングの概要とメリットについて紹介します。
図1:データセンタとエッジの処理の違い
データセンタは、電源や空調などコンピュータに最適な環境で処理を実施できることから大規模な演算を実行するのに向いていますが、データ転送時間やセキュリティ面を考慮すると必ずしも最適なアーキテクチャではありません。
エッジコンピューティングの基本的な考え方は、データの発生源に処理を配置することにあります。つまり、データではなくサイズのより小さい「プログラム」をデータの近くに移動させ、データ発生源の近くで処理を実施します。
映像など比較的大きなサイズのデータを処理する場合は、エッジコンピューティングを利用することで以下のようなメリットが得られます。
- (1)データ転送時間の削減による低レイテンシの実現
- (2)NW帯域削減によるコスト削減
- (3)エッジ側で処理を実施し、生データを保存しないことによるセキュリティの向上
しかし、エッジコンピューティングも万能ではなく、処理特性に応じてデータセンタで処理するのかエッジで処理するのかを選択しながらアーキテクチャを決めていく必要があります。多くのケースでは、データセンタとエッジの両方を使うハイブリッド型を採用しています。
2.エッジコンピューティングの世界観とユースケース
NTTデータが考えるエッジコンピューティングの世界観を「図2:エッジコンピューティングの世界観」に示します。現実世界にカメラやセンサを設置し、そこから取得できる情報をもとにユーザ解像度を上げ、的確な情報をユーザに提供することを目指しています。
図2:エッジコンピューティングの世界観
エッジコンピューティングは業界を問わず普及していくとされていますが、ここではより早期に普及していくと考えられる小売・流通業を例にしたユースケースを「図3:エッジコンピューティングのユースケース」に示します。今までできなかったこともエッジコンピューティングという技術を活用することで実現が可能になります。
(1)DDOOH(Dynamic Digital Out of Home)
ユーザ属性をAIカメラで判定し、興味関心に合わせた広告を提供することで、売上向上を目指します。また、広告の視聴時間や広告視聴後の行動を可視化することで、広告自体の価値向上に寄与します。
(2)フードロス削減に向けてダイナミックプライシング
AIカメラや重量センサを用いて、お弁当の在庫情報や顧客数をリアルタイムに把握し、需要と供給を考慮した価格設定(ダイナミックプライシング)を行い、フードロス削減に寄与します。
(3)ARナビを活用した店舗誘導
ARナビを利用して、顧客を店舗まで誘導します。途中にクーポンなどを配置し、エンターテインメント性を加え、継続的な利用を促します。
図3:エッジコンピューティングのユースケース
3.NTTデータのエッジコンピューティング事例
NTTデータのエッジコンピューティング事例をご紹介します。コロナ渦以降、働き方は劇的に変化しており、社員のコミュニケーション不足を感じている企業も増えてきています。そこで、オフィス内にカメラを設置して人の行動を可視化し、コミュニケーションを活性化するとともにエンゲージメント向上に寄与する取り組みの実証実験を行っています。ビーコンなどのセンサを持つことなく、カメラのみを使って人物と位置の特定を行います。具体的なビジネスストーリーは「図4:オフィス内人流トラッキングのユーザシナリオ」を想定しています。
(1)生産性向上
事前に登録されたスキル情報を参照し、今の仕事に必要なスキル保持者同士をマッチングします。位置情報も活用し、「今すぐ相談したい」という要望に応え、困っていることを迅速に解決することで生産性を向上させます。
(2)コミュニケーション活性化
事前登録された趣味趣向を考慮し、今まで接点がなかった人とのコミュニケーションを活性化させます。自分と同じところにいる人の中から「この人をランチに誘いましょう」や「長時間作業しているので、この人を誘ってコーヒータイムは如何でしょうか?」などシステムが出会いのチャンスを手助けします。
(3)混雑状況の可視化
フリーアドレスのオフィスでは、「出勤したが席がない」という場面に遭遇した人もいると思います。現在の混雑状況をリアルタイムに把握し、空き状況を可視化します。
図4:オフィス内人流トラッキングのユーザシナリオ
また、本実証実験の動画は「オフィス内人流トラッキングのデモ動画」になりますので、ご覧ください。
オフィス内人流トラッキングのデモ動画
4.まとめ
エッジコンピューティングを活用することで、従来のアーキテクチャでは実現困難であったアイデアも実現できるテクノロジーが登場しています。現実世界の行動をデジタル化することで、これまでできなかったUXの提供や働き方の実現など、新しい価値創出の可能性が広がりますので、ビジネスアイデアをお持ちの方はぜひともNTTデータにお声がけください。