NTT DATA

DATA INSIGHT

NTTデータの「知見」と「先見」を社会へ届けるメディア

絞り込み検索
キーワードで探す
カテゴリで探す
サービスで探す
業種で探す
トピックで探す
キーワードで探す
カテゴリで探す
サービスで探す
業種で探す
トピックで探す
2024年4月18日事例を知る

市場での競争力を加速せよ!
~NTTドコモグループがめざす巨大な法人会員基盤が支えるアジリティ追及のサイクルとは~

2022年7月に新体制となったNTTドコモグループ。法人事業の拡大・連携のため、NTTグループ全体でのマーケティング活動やサービス協調を見据え、法人顧客を一元管理する会員基盤の刷新を行ってきた。法人顧客向けの革新的なサービスをいち早く提供するため、「アジリティ追求」をスローガンに掲げてスタートした、システム開発の狙いとその開発の裏側に迫る。
目次

大規模システムに導入したグローバルスタンダードな開発とは?

会員基盤の刷新は、NTTドコモグループ各社が顧客情報を共有・分析・活用することにより、グループ全体での法人事業の強化を実現する取り組みの1つです。当初の会員基盤が抱えていた課題と、刷新がどのように進められたのかについて、NTTドコモの藤井氏はこう語ります。

株式会社NTTドコモ 情報システム部 経営基盤 担当部長 藤井 伸

株式会社NTTドコモ 情報システム部 経営基盤 担当部長
藤井 伸 氏

「2021年7月に法人向けの新会員ビジネスプログラム『ドコモビジネスメンバーズ』の提供を開始しましたが、元々は回線契約管理と会員管理を同一のシステムで担っていました。従来のシステムは回線事業の顧客管理と密結合状態にあり、複雑で、それが足かせとなってコストとアジリティに課題がある状態でした。また、システムメンテナンスによる定期的なサービス停止があることや、定期サイクルで開発をしているためサービス提供までの期間が課題でした。

新たなNTTドコモグループ発足にあたり、ドコモビジネスとして今まで以上に法人事業を強化し、大中小の法人顧客へのソリューション販売を、既存チャネルをフル活用して一体的に展開していくことが求められました。それには、契約管理と会員管理を分離し、システム停止を最小限にとどめること、開発スピードを速め、アジリティの高い会員基盤を整備することが急務でした。

また、ビジネスを支える基盤として、5年後や10年後も変化に強いシステムであるには、クラウド製品を活用してインフラ面の管理にかかる手間を減らし、必要に応じてリソースを迅速に増減させることがベストです。できるだけオーダーメードではないクラウド製品の組み合わせで、グローバルスタンダードかつベストプラクティスを踏まえたシステム開発を行うという思想が、アジリティの追求に必要不可欠ではないか、と結論づけました。

一方で、新しい会員基盤の構想を立ち上げた当初は、NTTドコモグループとして今後どのようにビジネスが展開されるか、その時のシステム配置がどうなっているか、想像が付いていませんでした。NTTドコモにも多数のシステムがありますが、NTTコミュニケーションズも同様に多数のシステムがあり、既存システムを把握するところからのスタートだったのです。そこで、基幹システムで何度も苦難を共に乗り越えてきたNTTデータに相談しました。新しい会員基盤が加わり、どうお客さまへ価値を生み出していくのか、どのような手段があるか、最良な方法はどれか、など、NTTデータの担当者とは何度も議論を重ねました。その中で、将来のNTTドコモグループのビジネス戦略を見据えた解をNTTデータが示してくれたと思っています」

共創により実現した短期間でのシステム開発

NTTドコモからの依頼を受け、プロジェクトが発足。2021年5月に基本構想の検討を開始し、同年7月に開発がスタートしました。新体制発足のちょうど1年前です。

NTTデータの開発プロジェクトマネジャーとして参画したNTTデータの河野、寺田は次のように話します。

テレコム・ユーティリティ事業本部 モバイルビジネス事業本部 データオペレーション担当 課長 河野 武史

テレコム・ユーティリティ事業本部 モバイルビジネス事業本部 データオペレーション担当 課長
河野 武史

「ビジネスdアカウントを軸に管理する新たな法人会員システムを構築しました。NTTドコモ様の戦略である法人事業の強化に向けて、1年弱という短期間で開発する必要がありました。既存の法人顧客システムは、1社あたり数千万件規模のデータがあり、それぞれアプリや環境も異なります。これらを連動させ、さらに高トランザクションを実現するとなれば挑戦的な開発になるだろうと、技術チームとともにすぐ検討を開始しました」(河野)

「そこでNTTデータが提案したのが、各社のさまざまなシステムとの連携を短期間で実現する、iPaaS製品「MuleSoft」(※1)(※2)の導入でした。

テレコム・ユーティリティ事業本部 モバイルビジネス事業本部 データオペレーション担当 課長 寺田 有希

テレコム・ユーティリティ事業本部 モバイルビジネス事業本部 データオペレーション担当 課長
寺田 有希

NTTドコモ様も、NTTデータも、iPaaS製品を大規模システムへ導入したのは初めてでした。これまでのシステム開発のスタイルと異なり、品質・コスト・スケジュール面でトライしてみないと分からない部分が多々あったため、技術チームとすぐにプロトタイプ開発に着手。私を含めてプロジェクトメンバーはiPaaS製品の未経験者でしたが、当社の技術チームが持つノウハウを活用し、短い開発期間で無事にサービス開始を迎えることができました。まさにお客さまとの共創プロジェクトだったと思います」(寺田)

初期検証から技術チームとして参画した山本、宇佐は、iPaaS製品(MuleSoft)を提案した理由として、このように振り返ります。

技術革新統括本部 システム技術本部 ADM技術部 課長代理 山本 英之

技術革新統括本部 システム技術本部 ADM技術部 課長代理
山本 英之

「グループ全体で共有する連携基盤には、既存のサービスだけでなく、将来的に追加される多様なサービスとも容易にデータ連携ができる『拡張性』および『開発柔軟性』が必要でした。MuleSoftでは200種類を超えるコネクタが提供されており、オンプレミス環境で動作するシステムからSaaSまでさまざまなシステムとのデータ連携が可能です。さらに、ローコード開発により部品ごとの独立性を保ち、システム改修時の影響範囲を明確にできる点も、頻繁な機能追加が想定される本システムに適した製品だと考えました」(山本)

一方で宇佐は、システム設計では、セキュリティ、性能など非機能要件も慎重に検討する必要があると解説します。

技術革新統括本部 システム技術本部 ADM技術部 主任 宇佐 啓史

技術革新統括本部 システム技術本部 ADM技術部 主任
宇佐 啓史

「連携するデータは重要な顧客情報がメインのため、扱いは特に注意が必要です。複数APIの組み合わせでデータ連携を実現するiPaaSにおいて、API間、システム間でいかにそのデータの整合性を担保するかといった点は、設計の際、熟考を重ねた部分でした。

また、性能面については高負荷な処理の実行中であったとしても、それ以外の機能に悪影響が出ないようにしなければいけません。API設計では機能分界点だけでなく、信頼性、API毎の負荷率などを加味した設計が求められました」(宇佐)

(※1) iPaaS:

integration Platform-as-a-Service:APIの開発、運用、管理をワンストップで提供可能なクラウドサービス。API連携によりレガシーとデジタルのスムーズな統合が可能となる。

(※2)

MuleSoftはiPaaS製品としてAnypoint Platform(本稿上では、便宜上MuleSoft=Anypoint Platformとして記述)を提供している。「追加開発時の高いアジリティ」「ローコード開発」が主な特徴。

挑んだ先に見えた景色

最新のデジタル技術の活用や、新しい開発プロセスの導入など、開発までの検証を重ね、STEP1の基盤構築を9カ月、STEP2での他社連携をさらに9カ月と、わずか1年半でのリリースを実現しました。

「iPaaS製品を導入したことで、ローコード開発による“高い生産性開発”と、エンドユーザーに影響のない“サービスを止めないリリース”が実現でき、加えて、システム開発そのものの『アジリティ』も高まる結果となりました。開発がスタートしてからリリースまでは、本当にあっという間でした」(寺田)

今回のシステム開発は、リリース後の運用でもアジリティの追求を発揮することとなります。

テレコム・ユーティリティ事業本部 モバイルビジネス事業本部 データオペレーション担当 エグゼクティブITアーキテクト 黒岩 圭二朗

テレコム・ユーティリティ事業本部 モバイルビジネス事業本部 データオペレーション担当 エグゼクティブITアーキテクト
黒岩 圭二朗

「システム運用も大幅に変わりました。MuleSoftはAPIのゼロダウンタイムデプロイが標準で備わっているため、データベース(DB)などに変更がない限りはエンドユーザーにほぼ影響なくリリースができます。

また、MuleSoftのAPログやDBデータから取得した値をDatadogに集約し、APIのリクエスト数やエラー件数、処理待ち件数などをダッシュボード化することで、NTTドコモ様と共に目線を合わせてシステム状況を確認できるようになりました。万が一のトラブル時の分析やお客さま報告までのリードタイムも各段に短縮でき、NTTデータのアジリティも高まったと体感しています」(黒岩)

図:法人会員基盤の構成概要

図:法人会員基盤の構成概要

NTTデータとの開発について、NTTドコモの橋本氏は次のように振り返ります。

株式会社NTTドコモ 情報システム部 経営基盤 エンタープライズシステム 担当課長 橋本 賢介

株式会社NTTドコモ 情報システム部 経営基盤 エンタープライズシステム 担当課長
橋本 賢介 氏

「MuleSoftを活用してアジリティを高めるために、基幹システムを参考にして、MuleSoftに合わせた開発プロセスや成果物を、新たに定義しました。ただ、実際にやってみるとうまくいかないこともあり、STEP1での反省を生かし、STEP2での開発を進めました。

また、品質面の懸念もありました。新規参画者などが原因で、開発途中で品質懸念が発生しましたが、品質向上策を立てて早急に対応してもらい、無事にサービス開始を迎えることができました。NTTデータとは長年のパートナーであり、お互いに、一緒により良いものを作っていこうという気持ちがあったからこそ、今回のプロジェクトを成し遂げられたと思っています」(橋本氏)

これからの展望

会員基盤システムは、NTTコミュニケーションズの一部データと連携した段階にあり、今後もNTTドコモグループ各社へと拡張していく予定です。これからの展開について、NTTドコモの橋本氏、さらにNTTデータの河野に聞きました。

「ビジネスdアカウントのさらなる拡大により、マーケティングにどう活用していくか、フロントにどのように見せていくかを引き続き検討しています。また、将来的にはコンシューマ向けに展開していくことも視野に入れています。コンシューマ向けの会員制度は、法人会員以上に多くのお客さまにご利用いただいており、将来性を踏まえながら、今見えている課題に対応していく必要があります。特に、運用面では、MuleSoft側で障害が発生した際の復旧に向けた対応状況の連携やさらなる品質向上など、私たちがエンタープライズシステムに求めるSLAに見合う改善を、NTTデータ協力の下でSalesforce社も含めて継続的に議論しています」(橋本氏)

「今後は、法人事業だけでなく、コンシューマ向けサービスへも拡大できるよう、お客さまビジネスを発展させることが、私たちの使命です。お客さまの戦略や将来のニーズを見据えたご提案をしていくとともに、システム開発のプロフェッショナルとしてのさまざまな学びを生かし、今後もチャレンジし続けたいと考えています」(河野)

(※)Amazon Web Services、AWS、およびPowered by AWSのロゴは、Amazon.com, Inc.またはその関連会社の商標です。
(※)その他の商品名、会社名、団体名は、各社の商標または登録商標です。
お問い合わせ