1.はじめに-パートナーアライアンスの難しさ
前回の記事(※1)では、スタートアップ発掘からビジネス展開までの全体像(図1)を紹介し、スタートアップに注目すべき理由と選定のポイント(フェーズ1と2)について解説しました。
企業にとってスタートアップは、自社では生み出しにくいスピードと独自の技術をもたらす存在です。しかし現実には、「スタートアップと連携したサービスによる案件獲得方法が分からない」「事業化後のビジネススケール方法が分からない」といった難しさがあります。
今回取り上げるのは、事業立ち上げ(フェーズ3)やビジネス拡大とグローバル展開(フェーズ4)におけるパートナーアライアンス戦略です。NTT DATAでは、単発の実証実験や事業で終わらせず、スタートアップとの継続的な関係構築と事業スケール化を実現するための仕組みを確立しています。この記事では、その具体的なプロセスと知見を共有します。
図1:スタートアップ発掘からビジネス展開までの流れの一例
https://www.nttdata.com/jp/ja/trends/data-insight/2024/0527/
2.持続的な協業を実現する分析と体制構築
NTT DATAでは、スタートアップとの協業を単発で終わらせず、アライアンスを締結した”パートナー”として、ともにビジネス拡大していくことを重視しています。そのために、定性と定量の両面で協業状況を分析し、継続的な連携を強化するためのフォロー体制を整えています。
2-1.スタートアップの動向把握
資金調達、経営体制の変化、新機能開発、競合他社の出現など、スタートアップの動きは極めて早いものです。NTT DATAでは、海外拠点を含むグローバルネットワークを活用して、スタートアップのアップデート情報を定期的に収集しています。さらに、NTT DATA各国のサイバーセキュリティスペシャリストやビジネスのリーダーが参加するグローバル会議を週次で開催しています。その会議では、スタートアップから最新のサービスや成功事例の紹介を受け、NTT DATAとの協業や課題を議論しています。新機能のリリースや買収情報が入れば、直ちに国内外のビジネス検討チームが顧客提案やスタートアップとの連携方法を議論します。こうした継続的な議論が、新たな国や業界へのビジネス拡大につながっています。
2-2.売上実績の確認
協業がビジネスとして定着しているかを確認するため、四半期から年単位で売上実績を分析します。パートナーとの売上が横ばいまたは減少傾向にある場合は、「市場変化」「技術トレンド」「ビジネス体制上の課題」などの要因を分析し、具体的な改善策を立案します。場合によっては、補完技術を持つ別のスタートアップとの連携によって、ビジネスの活性化を図ることもあります。
2-3.パートナー企業のTier化
多くのスタートアップと協業する場合、リソース配分の明確化が欠かせません。NTT DATAでは、売上実績や成長可能性、市場分析などをもとにパートナーをTier(ランク)分けし、注力パートナーを明確化しています。Tier上位のパートナーとは、共同リリースや共催イベントなどを通じて、より戦略的なビジネス連携を強化していきます。
3.パートナービジネス拡大戦略
顧客とのPoCを通じて生まれたサービスを商用化し、売上拡大につなげるためには、社内外の双方へのアプローチが求められます(図2)。
図2:社内外の双方へのパートナービジネス拡大アプローチ
3-1.パートナーとのPR活動
パートナーと連携した事業について顧客認知や案件を獲得するためには、成果を社外に発信することが不可欠です。NTT DATAでは、パートナーと連携したセキュリティ分野の成功事例を国内外で発信し、ブランド価値を高めています。
たとえば、OTセキュリティやサイバー脅威インテリジェンス領域のパートナーとの成功事例を、当社のグローバルサイトであるNTT DATA Focus(※2)に掲載しています。これにより、国内外の顧客が当社の先進的な事例について学んで、営業チームが顧客提案に活用できるようにしています。
また、当社公式のLinkedInやFacebookなどのSNSでも積極的に情報発信しています。顧客とのPoCは単なる検証ではなく、成功の物語を社外に共有するプロトタイプとなります。ビジネスをスケール化するために、成果を形式知化していくことが重要です。
3-2.ビジネスのグローバル展開とローカル展開
NTT DATAにおけるセキュリティスタートアップとのパートナー連携モデルには、トップダウン型とボトムアップ型の2つのアプローチがあります。トップダウン型とは、グローバルで標準とするセキュリティサービスやパートナーを定義し、各地域のグループ会社でローカル展開していく方式です。グローバルでのスケールメリットを生かした安価で効率的な調達が期待できる一方、サービス初期段階では各国の市場ニーズや法規制への適合に課題が生じることもあります。
一方ボトムアップ型とは、各国のグループ会社で誕生したスタートアップとのビジネスを、徐々にグローバルへ拡大する方式です。たとえばヨーロッパ地域のグループ会社での成果事例をもとに、日本市場向けにローカライズされたサービスも登場しています。各国のビジネスニーズに合わせたサービスを提供できるメリットがありますが、グローバルでの戦略的なパートナーの選出に困難を有する課題もあります。
どちらの方式であっても、成功事例を国内外のグループ会社間で共有し、地域最適化を進めることが、パートナービジネス拡大の鍵となります。
3-3.パートナーとの共催イベントの開催や展示会への出展
NTT DATAでは、顧客へのサービス認知拡大を目的に、パートナーとの共催イベントを積極的に開催しています。
NTT DATA主催のセミナーでは、協業パートナーが登壇し、実際の導入事例やユースケースを紹介しています。また、パートナーが主催するイベントに当社がブース出展したり講演したりすることで、顧客に対する双方のブランド価値を高める効果を狙います。共催イベントだけでなく、展示会にもNTT DATAが出展(※3)(※4)しています。パートナーとの協業で強化された当社のケーパビリティを社外にアピールし、ビジネスの拡大につなげています。
このように、イベントを単なるPRの場とするのではなく、パートナーとともにビジネスを共創する場として機能させることが鍵です。
3-4.パートナー契約や営業・デリバリー体制の最適化
協業をスケールさせるもう一つの鍵は、パートナー契約や営業・デリバリー体制の最適化です。パートナーへのライセンス費用や商流の調整を行うことで、グローバルスケールでのコスト最適化を実現しています。また、パートナー資格の取得支援交渉をパートナーと行います。これにより、パートナーのソリューションに精通した技術者を増やし、営業機会を拡大しています。
このように契約面と体制面の両輪で最適化を進めることで、競合他社よりも優位にパートナービジネスを拡大することができます。
https://www.nttdata.com/global/en/insights/event/2025/april/rsa-conference
4.まとめ - 共創を“文化”に変える
スタートアップとの協業を持続させる最大のポイントは、成功を仕組み化することです。このプロセスを通じて、NTT DATAはスタートアップの革新性を自社に取り込み、「パートナーとともに社会に新たな価値を生み出す企業」へと進化しています。確かな実績と高度な技術力によるセキュリティソリューションの提供は、NTT DATAにお任せください。


サイバーセキュリティについてはこちら:
https://www.nttdata.com/jp/ja/services/security/
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https://www.nttdata.com/jp/ja/services/consulting/
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