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2026.1.26技術トレンド/展望

NTT DATAでのプロジェクト審査から見える傾向と成功の要点

近年、システム開発プロジェクトは複雑化し、品質確保とリスク管理の難度は一段と高まっている。経営層をはじめ情報システム部門や品質保証組織、PMOにとって、プロジェクトの成功確率をいかに高めるかは共通の課題であり、競争力を高める鍵となっている。NTT DATAでは、プロジェクト審査委員会を中心とした体系的な審査や傾向分析を行うことで、リスクの可視化と早期是正を実現してきた。本稿では、これまでのプロジェクト審査活動で得られたデータから、近年の傾向や問題化の要因を整理。組織的な品質強化やリスクマネジメントの高度化に向けた示唆を示す。
目次

1.プロジェクト審査委員会の役割と背景

システム開発が複雑化する中で、プロジェクトの成功確率を高めるためには、品質やリスクを適切に管理する仕組みが不可欠です。

NTT DATAでは、その仕組みとして「プロジェクト審査委員会」を設置。大規模かつ高難度案件を主な対象として、提案前や重要局面において、プロジェクトの計画および管理面に関する妥当性の確認を行っています。具体的には、体制、スケジュール、コスト、リスク管理、品質確保、契約条件などを総合的に審査し、計画として不十分な点や実現性の低い点などに対処策を早期に講じるよう示唆や助言を行うことで、プロジェクトの成功確率を高めています。

本稿では、これまでのプロジェクト審査活動で得られた傾向や示唆を整理し、情報システム部門や品質保証組織、PMOの皆さまの取り組みに活かしていただける視点をまとめます。

2.審査案件の推移と全体動向

近年の審査実績を見ると、案件数は緩やかな増加傾向にあります。
一方で、問題化案件(※1)の比率は低下傾向を示しており、審査体制の成熟とリスク抑制の取り組みが着実に進んでいることが分かります。

図1:プロジェクト審査案件数と問題化率の推移

2022年度以降のデータを分析すると、契約面のプロジェクト特性(以下、PJ特性)(※2)に該当する案件で、問題化する傾向が顕著でした。

契約面のPJ特性とは、例えば、要件定義相当の工程からの一括請負契約などが該当します。要件が不明確な状況で品質・コスト・納期(QCD)の計画を立てづらい上、開発量が当初計画から変動しやすく、スケジュールやコストに影響し問題化するケースが見られます。

図2:問題化案件のPJ特性

一方で、工程ごとの発注や契約を段階的に進める「フェージング契約」を採用した案件では問題化率が低く、リスク制御と管理の有効性を確認しています。状況に応じた調整を行うことにより、リスクを軽減していくことが期待できます。

(※1)問題化案件

本稿ではコスト面での不採算案件を指す(品質やスケジュール上の問題点もコストに影響することから)

(※2)プロジェクト特性

NTT DATAで案件難度の評価を行う際に用いる全社標準の観点項目。過去の実績から問題化する可能性が高いプロジェクトの特徴を大きく4つの特性(顧客、業務、方式、契約)に分類して定義しているもの

3.問題化案件の特徴

問題化案件に共通して最も多く見られた問題点は、「要件・スコープ定義の不十分さ」です。

図3:問題プロジェクトに共通する主な問題点、要因

要件定義はお客さまと双方で協議し実施していますが、仕様が不明確なまま開発を進めると、後工程で仕様そのものに欠陥があること(仕様バグ)が判明したり、手戻りが発生しやすくなり、品質・コスト・納期(QCD)のすべてに影響が及びます。そのため、NTT DATAでは、上流工程(要件定義、設計)での審査やレビューに重点を置いてリスク管理を強化し、計画の精度を高める取り組みを重要視しています。この上流での品質づくりは、情報システム部門や品質保証組織などの皆さまに参考にしてもらいたい重要なポイントです。

4.大きな問題に発展する兆候を捉える要注意サインとは

問題化案件の多くでは、大きな問題に発展する前に必ず「小さなサイン」が現れています。例えば、次のような兆候です。

  • スケジュール確保の実現性や根拠が不十分なまま提案や開発を実施
  • 必要な体制を整備できる見通しのないまま提案や開発を実施
  • 必要基準を満たさない状態のまま進捗維持のため工程が進む(仕様の合意が不明確、品質基準が未達など)
  • ステークホルダー間の役割分担が曖昧

こうしたサインを早期に把握することで、立て直しの対策を講じプロジェクトを安定軌道に戻せるケースが多くあります。早期段階での適切な見直しこそが、問題化を防ぐ鍵と言えます。

5.近年の審査指摘傾向

近年の審査指摘事項を整理すると、多くの案件で共通して指摘されている5つの重要ポイントが見えてきます。

  • (1)見積り、コスト:見積前提条件や見積根拠の不足
  • (2)スケジュール:工期設定の妥当性、工程整合の不足
  • (3)体制、要員:有識者配置を含む要員計画の精度不足、体制の不十分さ
  • (4)品質、リスク管理:品質保証計画や非機能要件の不備、リスク検討の不足や不備
  • (5)契約、顧客調整:責任分担や範囲の曖昧さ

これらは、プロジェクト計画段階での綿密な検討や調整によって改善できる事項です。
早期段階での審査やレビューでプロジェクトの計画を高めることが、成功確率の向上に影響しています。

図4:近年の審査指摘事項の上位傾向

6.今後の方向性

NTT DATAでは、審査を通じて蓄積した知見を踏まえ、さらなる開発ガバナンス強化の仕組みづくりや対策強化を進めています。

今後は、

  • デジタル技術や生成AIを活用した開発ガバナンスの高度化、効率化
  • 過去の知見をアセット化し、プロジェクトをより強力にサポートする仕組みづくり

などの取り組みを強化し、組織全体のマネジメント力向上をより推進していきます。

7.リスクを「価値」へ変えるプロジェクトへ

プロジェクト審査で得られる教訓は、リスクの低減や回避をするためだけのものではありません。リスクを正しく理解し適切に管理することで、より大きな価値を生み出すプロジェクトへつなげることができます。NTT DATAでは、培ってきた知見をもとに、お客さまのプロジェクトの成功を支援する取り組みを今後も強化してまいります。

経営層をはじめ情報システム部門や品質保証組織、PMOの皆さまにとって、本稿がプロジェクト成功に向けた取り組みの一助となれば幸いです。

プロジェクトのリスクマネジメントに関するコンサルティングについてはこちら:
https://www.nttdata.com/jp/ja/lineup/project-risk-management-consulting/

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