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2020年8月27日INSIGHT

「明日から授業再開します」~コロナで強まる学校の情報発信と地域の関係~

新型コロナウイルスの感染拡大防止の目的で、多くの学校が休校を余儀なくされた。子どもたちに直接会えない休校期間中も、学校の先生は、自宅学習の紹介や学校再開の準備状況など、積極的な情報発信を行っていた。その情報発信を支えるプラットフォームとして、教育機関向けクラウド型ホームページ運営サービス「edumap」の利用が広がっている。
「edumap」は、導入による学校単体のメリットもさることながら、蓄積されたデータのさまざまな領域での利活用も期待されている。地域の災害対策やマーケティングへの活用など、学校が発信するデータの新たな可能性に迫る。

災害時にも迅速に情報発信「edumap」とは

「edumap」は、教育機関向けクラウド型ホームページ運営サービス。主に学校(保育園・幼稚園を含む)を対象とし、無償で利用できるサービス提供は一般社団法人教育のための科学研究所(以下、S4E)、インフラ基盤をさくらインターネット株式会社、「edumap」に蓄積された情報の分析や利活用をNTTデータが行うという役割分担のもと、3者の連携によって運営されている。

「edumap」は、国立情報学研究所が提供していた教育機関向けコンテンツ管理システム(CMS)「NetCommons」を基盤として開発・提供された。「NetCommons」は、オープンソース・ソフトウェアで、各学校は独自にWebサーバなどを構築・運用する必要があったが、前述の2社が加わることでSaaS型のサービスとして提供されている。

SaaS型での提供により、各学校はスピーディかつ簡単にウェブサイトを開設、運用できるようになった。加えて、学校行事や献立メニューのお知らせから、不審者情報、感染症状況などの非常時の情報共有まで、学校業務に特化したさまざまな機能を備えることで多忙な先生でも手軽な情報発信を可能とし、本来の教育業務に専念できるという教育現場の労働環境の改善にも一役買っている。

また、スマートフォンなどの普及による保護者層自身のデジタル化に伴い、従来の紙の「おたより」、電話連絡網での情報提供では不足を感じる保護者が増えていることを踏まえ、学校と保護者の信頼関係を構築する手段としても期待されている。

今回は、S4E代表理事であり所長の新井紀子氏に、「edumap」をはじめた背景やきっかけについて話しを伺った。

新井 紀子

新井 紀子
国立情報学研究所 社会共有知研究センター長・教授
一般社団法人教育のための科学研究所 代表理事・所長

私は2005年から教育機関向けCMS、「NetCommons」を提供してきました。
2011年の東日本大震災の際、被災県の多くがNetCommonsの利用者で、児童生徒や教員の安否確認、避難所としての学校からの情報発信、学習保障の手段として使われました。そのときに、全国の学校にNetCommonsをSaaSで届けることができないかと切実に考えるようになったのがedumap開発のきっかけです。

これからのIT企業には、膨大な情報をリアルタイムで収集し、分析・活用したものを社会に還元することが求められていると考えていますが、「災害時には避難所にもなる学校の情報」の重要性に注目した企業はNTTデータの他にありません。
地域のハブとしての学校が発信する情報を分析することで、これまでは人の感覚でしか捉えられなかった地域性などが可視化され、これまでにない地域ビジネスをも生み出す可能性を感じています。

コロナで情報連携の重要性が浮き彫りに

新井氏の指摘する「災害時の拠点としての学校」の観点は、災害が頻発する我が国では見過ごせない。一方で各学校が独自にWebサーバを構築・運用することは容易ではなく、ましてや災害に強い環境の構築はハードルが高い。被災による停電でシステムダウンし、安否確認や再開連絡もままならないのでは、万が一の時に安心して使用できない。

「edumap」のサーバは、さくらインターネットのデータセンタで運用されているため、災害対策は万全だ。また、スマートフォンからも更新できるため、PCのない避難所や外出先から情報発信も可能となるため、非常時にも安定して運用できる。

非常時の有用性については本年の新型コロナウイルスの流行下でも十分に発揮されている。

2020年3月、感染拡大防止のため、全国で多くの学校が休校となった。休校期間中、各学校では、「edumap」を通じて自宅学習の案内をしたり、学校の再開情報を掲載したりすることで、保護者との連絡の中心的役割を果たした。

学校にとっても、「edumap」を介して、近隣の他校の再開状況を迅速に把握することで、自校の運営の判断に生かす情報収集にも活用されている。

多くの子どもを預かる学校だからこそ、非常事態の情報連携は重要だ。実際、「edumap」の2020年2月のPV数と、5月のPV数を比較すると、約7.7倍(※)ほどに増えており、情報発信が積極的に行われていたことがうかがえる

(※)時期によって校数が異なるため、2月(1/27-3/1)のPV数と5月(5/1-5/31)のPV数を各月末時点の校数で割った数を比較

NTTデータは「データ活用」を担っていく

NTTデータはS4Eの掲げる学校が継続的に情報発信することの重要性に賛同し、「edumap」の運営に参画している。運営への直接的な支援に加え、着目しているのは、学校から地域へ発信された情報の分析や利活用だ。

具体的には、地域の中核である学校が発信する情報は、災害対策のほか、地域コミュニティ、地域ビジネスへの還元など、幅広いフィールドで新しい価値を持つ可能性があるという。

想定される活用シーンは以下のようなものがある。

  • 生徒の出欠情報から地域ごとの感染症流行状況を分析し提供することで、学校・政府/自治体・保護者を含め、予防対策の検討に活用する。
    ――例:いつ、どの地域で風疹が流行しそうか、どのタイミングでどのような予防策を開始すべきかの検討および周知など
  • 運動会などの学校行事情報から、近隣エリアの混雑情報/必要商品などを分析し、混雑状況の把握や必要持ち物の欠品解消に活用する。
    ――例:保護者が持ち物をそろえる際に必要な商品のリコメンド、店舗側への情報提供により欠品を未然に防ぐ
  • 災害情報から近隣エリアの危険地域や災害状況を分析し、事前回避の検討や災害時の状況把握・避難所情報に活用する。
    ――例:近隣のがけ崩れ・危険事象の学校間共有、プール事故の事例共有など
    ――例:近隣エリアのインフラ状況含む被害状況の早期共有、避難所の受け入れ状況・不足品の早期依頼など

さらにNTTデータでは、「edumap」に掲載された情報と、それ以外の情報と結びつけることで新たな活用の道も模索している。その一つが、Twitterにおけるツイート情報の活用だ。

これまでNTTデータが培ってきたTwitter分析の言語解析のノウハウを活用し、学校での発信された情報と学校周辺でのツイートを掛け合わせることで「edumap」で発信された情報の補完や、更なる理解の促進につながることを目指し、検討を行っている。

将来的には、学校のイベント予定は「edumap」から、地域のリアルタイム情報はツイートから取得し、必要に応じて関連情報・アラートを出すなどの可能性を模索している。

これからの展望

2020年1月末にサービスを開始した「edumap」。導入することによる学校単体への効果のみならず、加盟校を増やし、蓄積されるデータ量の拡充を図ることで、地域の災害対策やマーケティングへの活用などの、より大きなフィールドでの還元・活躍を目指している。

あらためて新井氏に今後の展望について聞いた。

新井 紀子

その後、過去に例がない3月2日から約3カ月にわたる全国一斉休校。
その中で、自校の児童生徒にアンケートを実施したり、宿題を配布したりする手段を無償で提供するedumapの機能の高さに注目が集まっています。

「教育×IT」というと、とかく児童生徒一人一台PCやプログラミング教育に目が行きがちですが、たとえば、教育委員会がリアルタイムで管轄しているすべての学校の「欠席率の推移」を把握し学校の異変を察知するとか、不審者情報を半径10キロ圏内の教育機関が漏れなく把握するといったことも「教育×IT」がすべき重要な役割です。
こうした「縁の下の力持ち」な役割を、NTTデータというパートナーを得て、edumapは果たしていければと思っています。

さまざまな領域でのプラットフォームの運営、そこに蓄積されるデータ分析・利活用はこれからのデジタル社会において非常に価値ある営みだ。そこにNTTデータは得意のデータ分析技術を活用し、貢献していく。

edumap公式サイト

https://edumap.jp/

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