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2021年2月19日INSIGHT

Withコロナの時代に求められるオンライン・トラストネス

NTTデータ、NTTデータ経営研究所は、『「オンライン・ファースト社会」という新しい日常』提言や情報未来研究会を通じて、Withコロナ時代でのデジタル化の課題や方向性の検討を行っている。本レポートでは、この一環として、東京大学大学院の江崎浩教授にお話を伺った。

オンライン・ファースト社会では社会システムに対する信用がいっそう重要になる

Q:ウィズコロナの方向性として先生が感じられていることはなんでしょうか?

ウィズコロナ社会の方向性として、オンライン・ファーストで社会設計が始められています。全てオンラインになったという前提から社会システムを考え直そうということが起こり始めています。その中で、オンラインの社会システムに対する信用(「オンライン・トラストネス」)が二極化してくるでしょう。オンラインの社会システムを簡単に信用する人と、気にする人と、二極化するのではないかと思います。

Q:なぜオンライン・ファーストでは信用が重要になるのでしょうか?

オンラインになると、サプライチェーンがグローバル化し、グローバルサプライチェーンとなります。そこにはサイバーセキュリティとナショナルセキュリティが絡んでサプライチェーンのシステムが組みあがってきます。また、レギュレーションや地政学的な要素も入ります。さらに、恐らく、オンライン・トラストネスの作り方はサプライチェーンの業界ごとに違うでしょう。オンラインでは、今までの国という物理境界で決められていた際よりも、信用の作られ方が複雑になると思います。

グローバルサプライチェーンになると、相手の顔が見えないのでどうやって信用するかが重要になってきます。ブロックチェーンは、信用できない人が大勢いる世界を前提にしたシステムですよね。政府を含め、隣人を含め、全員を単純には信用できないシステムを動かす際、ブロックチェーンが一番使えます。日本では他人を信用する経済でシステムが出来上がっていましたが、サプライチェーンがグローバルで動き出していると皆わかりだしたので、ブロックチェーンのようなことをやらなければいけなくなってきます。

図:ウィズコロナ社会におけるサプライチェーンや企業・働き方の変化

図:ウィズコロナ社会におけるサプライチェーンや企業・働き方の変化

Q:オンラインでの信用はどのように作られるのでしょうか?

地政学的、地理的制約がないのがデジタルの最大の価値です。したがって、コミュケーションのやり方も根本的に変わりました。自分の子供をみても、いきなりオンラインで友達を作ってしまっています。これは、昔はできなかったことです。優秀だと言われる学校で生活している子供たちは、面と向かったコミュニケーションが重要だと教えられ、クラブ活動等で戯れることが優秀になるために必要だと教えられていました。だから、今回、その方法論ができなくなった瞬間に混乱しています。一方、人間付き合いが苦手だったがオンラインが上手だった子供は、今回、意外とダメージを受けていないようです。

子供たちのオンラインでの信用の作り方は洗練されています。オンラインでゲームをしながら出会っていますが、ゲームのやり方やどこで何を話しているか、全部調べている。それによりトラストが出来上がって行くのだと思います。今は話をしながらレジュメの裏を取るとか、どういう発言をしているか、把握できるようになりました。今の若者は、面と向かって言っていることと、オンラインで話していることが違う場合、そのことにたいてい気づくのです。

オンライン・ファースト社会において働き方が可視化され、可能性が広がる

Q:オンライン・ファーストは働き方にどのような影響を与えるのでしょうか?

オンラインで仕事をするようになり、仕事の中身がデジタルで可視化されました。それにより、中間管理職がいなくても仕事が進むことがわかり、中間管理職の役割がさほど大きくないことが明らかになったと思います。

また、会社への帰属意識が幻想だったということがわかりました。マルクス経済学、資本論に戻る話かもしれませんが、金銭と交換で会社に個人の能力や労働を提供していると皆が理解するようになりました。それにより、皆が会社の就業規定に専業規定があることに違和感を抱き始めています。副業ができるなど、多様性が重要ではないかという考え方が再び話題にあがってきています。

今、昔の文通と同じことが起こっています。文通は相手をすごく美化しますが、それがオンラインでかなり起こっています。そこでのコミュニケーションでは、地理的制約がFace-to-Faceとは違うものが本当の価値だということです。

かつては、すごくユニークでパワーを持つ人にしかできないことでしたが、今では、普通の人でも遠隔により地方で働きやすくなりました。これまでは、Face-to-Faceでコミュニケーションすることが会社のルールで定められていたので、スピンアウトして地方で仕事をするのは難しかったのです。可能性はありましたが、ハードルが高く、可能性が非常に低かったのです。それが、よりやりやすい環境に変わってくると、チャレンジする人が増え、マス化・一般化していきます。

企業はもっと多様性を重視し、ロングターム・複数のKPIを持つことで危機対応できる

Q:企業はウィズコロナでどのように対応すればいいとお考えでしょうか?

多様性が重要になります。安定的な経営環境であれば、企業においてはシンプルなKPIを使って評価していれば良かったのです。しかし、多様性を軽視し、シンプルなKPIを取り入れることにより、それ以外の要素が除去されてしまっていました。今回のウィズコロナの経営環境においては、そういった企業は脆弱であることが露呈しました。

だから、これからは企業や社会は、余白を持たなければいけない、多様性が重要という話が出てきます。イノベーションを起こすためには、そのような、言わば変なやつが重要で、そいつらを混ぜなければいけないわけです。まさにこれはシリコンバレーがやっていたことです。変なやつを尊重して混ぜ合わせ、新しいものを生み出そうということ、これは正当化されて進んでいくと思います。つまり、「強い組織は、自由度が高い」です。

そうすると、どうやって余白を持たせるかということを考えなければいけなくなります。だからこそ、シングルKPIからマルチKPIに変えていくこと、危機管理が重要になってきます。そして、危機管理は、ショートタームリスクマネジメントとロングタームリスクマネジメントが必要になってきます。だから昨今、SDGsという議論が出てきているのです。ロングタームリスクマネジメントが必要だという認識が出てきて、人間が自然には勝てないというのが明らかになり、経済をロングタームで維持するためには自然にはしっかりと対応しなければいけないという認識が、今になり出てきています。

Q:今後の企業の在り方はどうなりますか?

トラストの範囲によりステークホルダーが変わります。非常に広い範囲をカバーしようとすると、大きな傘をかぶせられる権威が必要となりますが、それをしっかりと総合的に監視する存在(エンティティ)を作らなければなりません。それは、アーキテクチャとしては例えば三権分立です。

トラストを、例えば政府だけが単一で担うのはおかしく、カウンターパートとして、利益が異なる別の主体が監視役となる必要があります。その役割として、グローバル企業に期待がかかります。グローバル企業であり日本が世界に誇るに資する特長である通信の秘匿性を守る遺伝子を持ったNTTグループは、その選択肢のひとつになる可能性があるのではないでしょうか。

<研究会の予定>

- NTTデータは、「これから」を描き、その実現に向け進み続けます -
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