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JA信州諏訪の「アクティブ・メンバーシップ」の強化に向けた取り組みの背景を教えてください
信州諏訪農業協同組合 管理部 企画管理課 課長
清水 親 氏
清水 氏
人口減少に伴い、当JAも組合員数の減少傾向にあります。利益追求ではなく人のつながりを増やすことを重視している私たちにとっては大きな課題でした。
そこに輪をかけて起こったのが、JA全中(全国農業協同組合中央会)が運営してきた全国共通ポイントシステムが、2026年度に廃止されるという問題です。ポイントシステムはアクティブ・メンバーシップの中核に位置付けられる制度であり、JA長野中央会でも対応を協議したところ打ち出されたのが、「なくしてしまうのは簡単だが、組合員の新規加入促進のためのツールが手薄になってしまうため、何とか継続できる方法を考えよう」という方向性でした。
全国共通ポイントシステムでは、組合員の加入促進やメリットの訴求といった点でアプローチが難しかったため、物足りなさを感じていた面もあり、これを機に独自のポイントシステムを導入することを決めました。
信州諏訪農業協同組合 管理部 企画管理課 課長代理
朝倉 啓介 氏
朝倉 氏
「JA経済圏の拡大」という言葉が示すように、農業の発展には地域経済の活性化が不可欠だと考えています。地域ならではの価値を生かしたポイントシステムを構築することで、組合員とのつながりを強化し、その方向を目指していきたいと考えました。
従来の全国共通ポイントシステムにはどのような課題があったのか
清水 氏
従来は、貯金残高や購買実績に応じて自動的にポイントが付与され、年1回自動的にキャッシュバックされる仕組みでした。要するに利用者は、知らないうちにポイントがたまり還元されるため、メリットを実感しにくい状況でした。
また、「利用高配当」という別の還元制度とも重複していました。JAの貯金や共済、購買など各事業を利用した量に応じて支払われる事業分量配当金のことで、組合員にとっては、口座への入金がどちらの制度によるものか区別できません。
朝倉 氏
運用面での課題になりますが、従来のポイントシステムでは、年1回ポイント残高を記載した通知を各組合員宅に配布していました。広報誌と違い宛名と個人情報が記載されているため、配布時には細心の注意が必要でした。
独自のポイントシステムを導入するにあたり、重視したこととは
清水 氏
組合員の新規加入に資するシステムとすることです。従来は組合員のみにポイント付与を行っていましたが、新システムでは組合員以外にも直売所の利用などに応じたポイントを付与します。ただし組合員は5倍のポイントがたまる仕組みとしており、当JAへの加入メリットを明確化しています。
信州諏訪農業協同組合 管理部 企画管理課(DX推進担当)係長
佐藤 吉紀 氏
佐藤 氏
また、新システムではポイントの自動付与をやめ、スマホによるQRコード読み取りなど、利用者自身がアクションを起こす仕組みに変更します。還元方法もキャッシュバックだけでなく商品券や値引きなど選択肢を増やすなど、能動的にポイントをためて使う「ポイ活」的な体験を提供しようとしています。
少し大げさな表現になりますが、多くのクレジットカード会社やキャッシュレス決済事業者が注力しているビジネス戦略と同様の「JA経済圏」を、私たちなりに拡大したいと考えています。
「あい作」のポイントロイヤルティプログラム機能を導入した経緯を教えてください
清水 氏
他の選択肢として、利用高配当のシステムに改修を加える方法もありましたが、それでは従来のポイント自動付与・自動キャッシュバックから脱却することができず、スマホ上での履歴確認もできません。NTTデータから提案されたポイントロイヤルティプログラムだけが、私たちの課題を解決できる最優先の選択肢でした。
株式会社NTTデータ 食農ビジネス推進部 食農ビジネス担当 課長代理
前田 健太
前田
従来の全国共通ポイントシステムの廃止、組合員数の減少というJA信州諏訪の課題に対し、当社は「ARISING™」(※2)の取組として、組合員数の増加、JA総合事業利用者の増加について具体的な目指すべき目標を提言し、当社の顧客管理SaaS「CAFIS Explorer」をポイントシステムの基盤とし、JA信州諏訪の業態に特化したスマホアプリの構築を提案させていただきました。加えて訴求したのが、共同利用型によるサービス運用です。全国のJAへの横展開を見据え、共通化できる部分と個別要件への対応部分を切り分けサービスを実装しました。これにより、コストを抑えつつJA信州諏訪の独自ニーズに対応し、成果創出を実現いたします。
株式会社NTTデータ コンサルティング事業本部
カスタマー&マーケティングユニット ソリューショングループ シニアコンサルタント
佐草 友也
佐草
技術的な観点からは、CAFIS Explorerによる複合ランク機能が重要な役割を担っています。組合員(正組合員と准組合員)とそれ以外の利用者を区分し、それぞれで付与するポイントに自動的に反映するもので、組合員の拡大を目標とするJA信州諏訪の課題解決に貢献します。
ARISING™は、金融機関の経営変革と地域社会の持続可能な発展を支援する新たな取り組みです。
現時点での新ポイントシステムの手応えはいかがでしょうか
清水 氏
スマホアプリのプロトタイプを見て気に入ったのは、好きな時に自分のポイント残高を確認できることです。従来のシステムでは定期的なお知らせ時にしか確認できなかったのに比べれば、飛躍的な改善です。QRコードを読み込むことで行われるポイント付与も、アクティブ・メンバーシップへの参加を強く実感させることができ、たまったポイントの使い道でも新たな楽しみを提供するなど、大きな期待を寄せています。
今後の展開をお聞かせください
清水 氏
2025年11月から当JA職員によるプレ運用を開始しました。まずは職員自身が新ポイントシステムのメリットを理解したうえで、2026年3月からの正式サービス開始に臨む計画です。従来の全国共通ポイントシステムを利用していた組合員は自動的に新システムの会員として引き継がれますが、スマホアプリについてはご自身でダウンロードして利用登録を行う必要があります。こうしたシステム移行に伴う手続きについて、職員もしっかりフォローしていきます。
朝倉 氏
JA経済圏の拡大は、全国のJAが意思統一できないと実現が難しい課題です。その可能性を秘めているのがNTTデータだと個人的に考えています。全国のJAの基盤システムやソフトウェアを担っておられるため、農協職員以上に農協のことをご理解いただいています。人口減少でJAの基盤が縮小せざるを得ない状況の中でも、こうしたシステムを通じて共に成長させていただきたいと思います。
佐藤 氏
私はあとから異動してきて今回のプロジェクトに加わったのですが、新システムの展開には職員の協力が不可欠だと感じています。「刷新されたポイントシステムはとても良い!」と足元から共感を得ることで、地域の皆さまへのシステムの普及力はまったく違ってくるからです。もといた人事部での経験を生かしつつ、より多くの職員をファンとして巻き込むことで、新システム推進の原動力に変えていきたいと考えています。
前田
「あい作」は、食と農に携わる皆さまと一緒に、より良い地域コミュニティを構想し、創造していくプロジェクトです。その意味でポイントロイヤルティプログラム以外にも、お役に立てる機能やサービスはまだまだ数多くあります。これまでにNTTデータが携わってきた農業DXの経験とノウハウも生かしながら、JA信州諏訪の新たなプロジェクトに寄り添い、一体となって課題解決に臨んでいきます。
佐草
新ポイントシステムの正式リリース後も、新たな改善点やサービス拡充に関するご要望は次々に出てくると予想されます。そのような場合も、ぜひお気軽にご相談をお寄せください。私たちコンサルタントも引き続き全力でサポートさせていただきます。


CAFIS Explorer概要についてはこちら:
https://www.nttdata.com/jp/ja/lineup/cafis_explorer/
あい作 概要についてはこちら:
https://aisaku.nd-agri.jp/
JA信州諏訪 ポイントサービス提供開始のニュースリリースについてはこちら:
https://www.nttdata.com/global/ja/news/topics/2025/032400/
地域金融を軸に地域社会の発展を支援する「ARISING™」のニュースリリースについてはこちら:
https://www.nttdata.com/global/ja/news/topics/2025/111300/
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