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1.業界横断の提案力が問われる時代へ、全社営業プラットフォーム導入の理由
NTTデータでは、官公庁、金融機関、法人企業といった幅広い分野において、強固な顧客基盤を強みとし、顧客ごとに最適化された組織体制のもとで長期的な信頼関係を構築し、持続的な成長を遂げてきました。
一方で、近年クラウドやAIといった先端技術を活用した顧客のビジネス変革支援が加速しています。業界横断の連携やスピーディーな意思決定が求められる営業活動において、従来の「顧客に最適化され過ぎた組織構造」が、全社的な機動力やアセット活用を妨げる場面が増えてきました。
こうした課題認識のもと、「Agentforce Sales」を次世代の成長エンジンと位置づけ、顧客最適という従来の強みを維持しながら、組織間連携の強化とアセット再利用を促進する顧客情報の適切な取り扱いが可能である全社営業プラットフォームを導入しました。
併せて、自らを「クライアントゼロ」と位置づけ、Agentforceをはじめ、Data 360、Tableau Nextといった最新テクノロジーを実運用で検証・活用することで、営業生産性の向上と変革の内製化に継続的に取り組んでいます。
2.生産性を下げていた構造課題
全社方針として改めて構想をたて、営業プラットフォーム未導入の組織を中心にアジャイル的に進めてきました。
当初、組織には大きく3つの課題がありました。
- (1)顧客・案件情報の散在
事業部ごとに情報管理が分断され、案件状況や顧客接点を正しく把握できず、提案のスピードと品質にばらつきが生じていた。 - (2)組織サイロ化による全社最適の阻害
他組織の情報が共有されず、アセットや知見が活かしきれない状態が常態化。全社で価値を最大化する仕組みが不足していた。 - (3)営業以外業務の肥大化
Excel・Teams・メールへの重複入力や訪問調整など間接業務が多く、本来の営業活動に割く時間を圧迫していた。
こうした課題が棚卸される中で、組織内では新規提案のプロセス管理を強化する必要性が明確になりました。また、経営層にも状況の理解が深まり、横連携が生まれにくい組織構造といった経営課題の対処が急務であるとの認識が共有されました。これらの背景をもとに、Agentforceの全社導入の方針が固まりました。
組織横断で情報を活用できるようにするためには、単にデータを統合するだけではなく、利用者の行動変容を促す仕掛けが不可欠でした。そのため、通知機能やAgentforceを活用した対話型検索を取り入れ、他組織の案件やソリューションに自然と気づける設計とし、利用者の意識を変えていく仕組みづくりに取り組みました。
図1:営業の全社的課題に対する施策の方向性
3.35事業部に寄り添う設計方針と段階展開の工夫
さらに、営業プラットフォームの現場への普及を進めるにあたって、大きな課題が2つありました。1つ目は「いかに現場に情報を蓄積してもらうか」、2つ目は「蓄積された情報が全社で活用できる状態になっているか」という点です。
情報を継続的に登録してもらうためには、Salesforceを特別なツールではなく、日常業務の一部として自然に使ってもらう必要があります。そのため、現場の業務プロセスに寄り添い、仕様を業務実態に合わせていくことが不可欠でした。一方で、全社横断で情報を活用するには、フェーズやもくろみ金額といった入力項目や選択肢に一定のルールを設けるなど、情報の標準化も欠かせません。
つまり、当社の35におよぶ事業部の現場業務に寄り添いつつ、標準化を推進する必要があるということであり、顧客最適化された現場が強みの当社においては、ここをいかに丁寧に進められるかが本プロジェクトの成功のカギでした。
この課題に対し、2つの解決策を採りました。
1つ目は、標準化と個別最適を共存させる設計方針です。フェーズやもくろみ金額といった全社共通のルールを定めつつ、プロファイルやアプリケーションは分野ごとに分離し、分野特性や本部・事業部単位の要件を柔軟に取り込める構成としました。
2つ目は、事業部ごとの伴走支援による段階的な展開です。標準化が進んでいた事業部から導入を開始し、ほか事業部については、営業特性の近い複数の事業部単位で段階的に展開を進めました。同時に、日常業務の置き換え提案からデータ移行、定着支援までを一体で行うことで、現場にとって無理のない活用定着を実現しました。
図2:機能実装の構造
4.クライアントゼロを軸とした営業生産性改革と最新技術の実装
今回の開発は、NTTデータが自らを「クライアントゼロ」として実践する取り組みとなりました。
プロジェクトではSalesforceの最新テクノロジーも取り入れています。
例えば、Agentforceを活用した議事録起点の活動・ToDo・週報の自動生成でエントリー業務を大幅に効率化し、Tableau Nextの対話型ダッシュボードを営業会議に活用することで、即時性の高い意思決定と議論の質向上を実現しました。
さらに、SnowflakeやData360とゼロコピーで連携する次世代の統合データ分析基盤を見据え、データドリブンな営業改革を先行して検証・推進しています。
5.導入後の効果
現在、Salesforce上への情報蓄積は順調に進み、蓄積データを起点とした社内連携案件など、具体的な成果も生まれ始めています。
従来の「動きのある案件の共有」が中心だった会議は、停滞案件や異常兆候のある案件への打ち手を議論する“本質的な会議”へと変わりました。案件の精度向上も進み、その結果として受注率が150%向上するなど、具体的な成果が表れています。
また、類似案件検索の導入により、ソリューション組織と営業組織の自発的な連携が促進され、複数の共同案件が創出されています。こうした連携の広がりは利用者の意識改革にもつながり、進展と組織間連携による案件創出により、利用者アンケートでは「他組織の情報に関心あり」回答が80%超という意識変化を達成しました。
業務効率化の面では、Agentforce活用による平均約20%のエントリー業務時間削減を実現。アカウントプラン作成支援など、さらなる高度活用を求める声が上がるなど、次の段階へのニーズが顕在化しています。
6.導入はゴールではない、改善サイクルで進化する営業基盤
これまで事業部ごとに点在していた重点顧客幹部との接点情報を全社横断で可視化できるようになり、アカウント戦略や経営判断における基盤情報として活用できるようになりました。
組織内完結の営業スタイルから脱却し、全社アセットを最大限に生かすための連携が進む環境が整備されています。
しかし、全社導入が完了したからといって、そこで終わりというわけではありません。「もう作ったんじゃないの?」と言われることもありますが、実際には運用を進める中で不足している部分や新たな課題が見えてきます。また、外部システムとの連携など、現場のニーズもあります。そのため、導入後こそ継続的に改善を進める重要なフェーズであり、必要な追加施策について丁寧に説明し、ご理解をいただきながら、より良いシステムへと進化させていくための大切なタイミングだと考えています。
今後は、成果創出のための機能の強化を通じて各組織の活用度をさらに高めるとともに、さらなるAI活用や基幹システム連携、グループ会社への展開にも取り組んでいく予定です。


NTTデータのSalesforceビジネスについてはこちら:
https://www.nttdata.com/jp/ja/lineup/salesforce/
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https://www.nttdata.com/jp/ja/lineup/cx_innovation/
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