
高齢になると睡眠の課題が増える
高齢になるにつれ、若い時よりも眠りが浅く時間が短くなる傾向があります。6.5~7.4時間睡眠の死亡率を1としたときの死亡危険率については、より短い睡眠時間では相対死亡危険率があがりますが、睡眠時間が9時間を超える長さとなると相対死亡危険率は3時間未満の睡眠時間の時よりも高くなるのです。一概に長く眠ればいいということにはならないのです。
とはいえ、1日の睡眠時間が6時間以下の場合、7時間以上眠っている人に比べて風邪をひくリスクは4倍以上高くなります。また、不眠の度合いが悪化するとQOLの水準は心不全の患者と同じレベルかそれ以下というイギリスの研究結果があります(イギリスの研究結果について出展要明記)(友野)

(出展 アメリカの睡眠財団の資料)
質の高い睡眠とは
研究結果によると、睡眠時間という「量的」な因子よりも「質的」な因子である主観的な睡眠感のほうがQOLへの関与が大きい可能性があるとされています。

(「地域在住高齢者の睡眠状況とQuality of Life の関係」(ヘルスプロモーション理学療法研究/3巻(2013)3号)より引用)(友野)
では睡眠の質を高めるにはどうしたらよいのでしょう。
- 1.日中の活動量UP
出勤の習慣があった人がリタイアしてからはがくっと運動量が減ってしまいます。電車で移動する際に一駅分は歩いてみるなど、心がけて日中良く動けば自然と就寝時にほどよい疲れがでて眠りにつくことができます。 - 2.カフェインは夕方まで
カフェインは脳に直接覚醒作用を及ぼします。夕方以降はコーヒーもカフェインレス、夕食時のお茶類もそば茶、ルイボスティーなどカフェインレスのものがおすすめです。 - 3.昼寝は15時まで!
「夕寝」してしまうと夜の睡眠に影響してしまいます。 - 4.タバコ、酒なるべく避ける
寝付けないからと「寝酒」をするのはNG。かえって睡眠の質を妨げてしまいます。 - 5.ぬるめのお湯で入浴
ぬるめのお湯とは湯温が38~40度です。ぬるめの湯に浸かることで、自律神経のうち副交感神経が優位になり、心身がリラックス。スムーズな入眠につながります。40度を超える湯温では交換神経が優位になり神経が高ぶってしまい寝つきが悪くなってしまうのです。
友野氏は5つのポイントを挙げました。
また寝る前の読書は入眠に効果があるという報告があります。おすすめは小学校低学年向けの本。難しい漢字がなくて読みやすく、読み終えるころにうとうとするようなちょうどいいボリュームのものが多いからです。
寝る前のスマホいじりはNG。スマホ画面から発せられる光が夜間に分泌される睡眠ホルモン「メラトニン」の分泌を抑制してしまうからです。また、動画やSNSを見ることで脳が刺激されて40度を超える湯温のお風呂に入ったと後同様に、交換神経が優位になり神経が高ぶってしまい寝つきが悪くなってしまうのです。
いろいろ試しても睡眠にどうしても睡眠障害に悩まされるという場合には、気軽に睡眠外来を受信することも大切です。
最後に睡眠の質を高めるエクササイズとして筋弛緩エクササイズを聴講者のみなさんと一緒に行いました。
睡眠は大切~自身の経験から~
睡眠コンサルタントとしてヘルスケア共創ラボのウェブサイトにも月次コラムで睡眠に関する様々な知識をインプットくださっている友野氏ですが、睡眠コンサルタントという職業に開眼したのは15年前にきっかけがあったとのことです。
「それまでは重度のパニック障害に苦しんだり、アトピーにも長年悩まされていたのが、質の良い睡眠がとれるようになってからメンタル面も体質面も改善されました。社会人になってから最初は病気の子どもたちを励ます仕事についていました。そのうち、病気になってから励ますのではなく、病気にならないようにするにはどうしたらいいのかを考え模索しているうちに睡眠の重要性に着眼し、自身の経験も踏まえてブログで発信しているうちに注目されるようになったのです。」(友野氏)

睡眠の未来に向けた取り組み
自身、睡眠状態の測定ができるウェアラブルデバイスを複数身に着けているという矢野氏。直近の注目する睡眠の未来に向けた取り組みを紹介しました。
NTTデータは2024年7月にカプセルホテルとコラボして睡眠をモニタリングするスリープテックホテルを開業しています。ベッドに備え付けられたカメラやセンサーで睡眠データを取得・分析し、パーソナルレポートを作成します。

布団の西川では睡眠分析アプリで生活習慣改善を図るセンサー付き寝具が発売されています。マットレスにセンサーが内蔵されており、スマートフォンの専用アプリ「Goomo(グーモ)」を連動させて睡眠の質を分析。センサーで収集したデータをもとに、アプリが生活習慣の改善策などを提案するというものです。
自身が意識して取り組む睡眠の質改善対策に加えて、テクノロジーを使った睡眠の質改善対策はシニアの方々の睡眠の質改善にきっとお役に立つものでしょう。

みなさま良い睡眠を。
※当日の講演は名古屋テレビ【メーテレ】の「おもてなし隊なごや」2025年1月19日「仲間と共に楽しく学ぼう!鯱城学園編」にて紹介されました。
おもてなし隊なごや - 名古屋テレビ【メ~テレ】
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