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NTTデータの経営管理の進化を支えるデータ活用基盤-構想とその全体像
NTTデータでは、経営管理業務の効率化・高度化に向けた取り組みとして、データドリブン経営を支えるデータ活用基盤を2024年度NTTデータ社を対象にリリースしました。
データ活用基盤の構築と活用推進においては、情報システム部門であるITマネジメント室が基盤の設計・構築を担い、データドリブン経営推進組織である業務統括本部が活用を牽引(けんいん)するという体制を取り、双方が密に連携しながら取り組みを進めてきました。
データ活用基盤の全体像について、活用推進を支援しているNTTデータ テクノロジーコンサルティング事業本部 奚 志俊は、「Snowflakeを分析基盤として、Informaticaで各システムやデータソースと連携し、Tableauで可視化をするという形で、データ活用基盤とBIを構築している。」と説明します。
また、2026年度には、NTTデータ国内グループ会社にも展開することで、グループ横断のデータ活用へと進化させようとしています。
図1:データ活用基盤全体像
データドリブン経営に向けた課題とデータ活用基盤の役割
NTTデータでは、2015年からTableauを用いた経営ダッシュボード基盤プロジェクトに取り組んでいましたが、活用範囲の拡大に伴い、分析に必要なデータの収集・加工プロセスは次第に複雑化していきました。必要なデータを集めるまでに時間がかかり、オンプレミス環境では柔軟な拡張にも限界があり、経営に必要な情報を迅速に届けられず、経営における意思決定の遅延を招く恐れがありました。そうした問題意識から、基幹系システム更改を契機に再構築したのが、Snowflake、Informatica、Tableauを組み合わせた今回のデータ活用基盤です。
NTTデータのデータ活用基盤がめざす姿についてNTTデータグループ ITマネジメント室 依田 梨帆は次のように語ります。「“データドリブン経営の実現”をめざす姿として掲げ、データガバンスの向上とデータ利活用の推進に取り組んでいる。具体的には、まず、データガバンスの向上として、必要なデータを必要なユーザーへ提供する仕組みを整え、分析の信頼性を高める品質管理を実施。次に、データ利活用の推進として、全社共通ダッシュボードや個別に活用するためのテンプレート、使いやすさを重視して設計したプラットフォームを提供した。さらに、これらを支えるデータプラットフォームを強化するため、データモデルやデータ連携方式の標準化を進め、システム間のデータ連携を効率化・明確化した。これにより、データを活用した迅速で的確な意思決定を可能にし、従業員が積極的にデータを活用する文化を醸成することをめざしている。」
リリース後1年半で、約5,000名のユーザーへ順次活用が広がりつつあります。
図2:データ活用基盤の目指す姿
データ活用基盤構築のポイント
NTTデータグループ ITマネジメント室 山本 健はデータ活用基盤の開発において、「(1)データモデリング(2)データチェック(3)CI(継続的インテグレーション)(4)Tableauダッシュボード性能改善の4つがポイントとなる」と語り、それぞれについて解説しました。
(1)データモデリング
今回構築したデータ活用基盤では、Informaticaはデータマネジメントプラットフォームとして連携・加工処理を担い、Snowflakeはデータの一元管理・蓄積、そしてTableauはそのデータをもとにした可視化・分析を行う役割を担っています。
データ構造は、1層から5層までに分け、各層ごとに明確な役割分担を定めて設計しています。
まず1層では、他システムから受け取った全量データをそのまま蓄積しています。過去データも保持しており、ここが”データの源泉”となっています。
続く2層では、その全量データをデータウェアハウス化、つまり業務的な分類や整理を行った形で蓄積しています。
各業務の分析に向けたベースとなるデータとしての役割を持ちます。
基幹システム側で構造変更があった場合、この2層までに影響をとどめる設計とし、3層以降の活用環境には影響が及ばないよう工夫しています。
3層は、データ分析や活用に向けた中核的な構造を持つ層です。ここではファクトテーブルとディメンションテーブルに分けた形で設計し、汎化(はんか)した構造で蓄積しています。
この層を中核とし、可視化の土台となるよう設計しています。
次に、4層は業務で実際に使われるダッシュボード用に、用途別に最適化されたデータを格納する層です。
目的ごとにチューニングされたデータセットが配置されます。
そして5層では、Tableau上のワークブックから直接参照される最終的なデータソースが格納されています。
ここからユーザーは、ダッシュボードやレポートを作成することになります。
図3:データ活用基盤開発のポイント(1)データモデリング
(2)データチェック
データを活用していく上で「そのデータが正しいかどうか」--つまり“信頼できる状態にあるかどうか”は非常に重要なポイントになります。もし元のデータが誤っていれば、それを元に導き出される分析結果や意思決定も当然ながら誤った方向に進む可能性があるからです。
データ活用基盤の構築にあたっては、データの背景にある“業務”そのものを理解した上で、データ品質をどう高めるかを検討し、運用に組み込んでいます。
その中で実施している施策としては「数値検証」、「チェック処理」の二つです。
まず、数値検証では、例えば営業実績などのデータにおいて、「組織に属する案件の積み上げ金額」と「当該組織の登録金額」がイコールになるかどうか、といったロジック面での整合性チェックを行っています。
続いて、チェック処理については1層~5層のデータモデル構造において、各層の間で段階的にデータチェック処理を実行しています。
さまざまな観点からデータ品質を担保する仕組みを設けており、現在では500本以上のチェック処理を、毎日自動実行することで品質を維持しています。
(3)CI(継続的インテグレーション)
品質保証を最優先に据えた上で、試験の自動化による効率化と精度向上に取り組みました。
具体的には、Jenkinsを活用してCI(継続的インテグレーション)基盤を構築し、開発・試験環境において、ユーザー向けに提供している環境とは別に、週次でのデグレ確認を自動で実施できる仕組みを整備しています。
また、SaaSや基幹系のバージョンアップの影響調査も自動化することで、試験負荷の軽減と迅速な対応を実現しました。
これにより、変更に強く、安定した品質を保った状態でのリリースが可能となったほか、従来は手作業で行っていた試験の大部分を自動化でき、試験工数を大幅に削減しています。
(4)Tableauダッシュボードの性能改善
ダッシュボードの表示が遅いというのは、ユーザーにとって非常に大きなストレスになります。
たとえ良いデータを可視化していたとしても、画面が重い・反応が遅いと、それだけで利用されなくなってしまう可能性もあります。
そのため“表示が早いこと”も活用促進において非常に重要な要素と考え、性能改善に取り組みました。
具体的な取り組みとしては、表示要素の削減とTableau内の計算量の削減です。
表示要素の削減においては、複数のワークシートを1つにまとめ、切り替え表示で統合することで、レンダリング処理を減らしました。
また、初期表示項目も見直し、ユーザーが必要なときにクリックして展開する形式への変更や、一覧表示の件数も絞り込み、表示負荷を軽減しました。
加えて、フィルターのリスト取得クエリについても、初期表示では実行しないよう制御することで、待機時間の短縮につなげています。こうした、表示内容の最適化においてはダッシュボードのオーナーである財務部門と密に連携しながら検討していきました。
データ活用を組織に根づかせる、業務統括本部による活用推進の取り組み
このように整備した環境を最大限生かし、データドリブン経営を実現するためには、利活用推進のための取り組みも必要不可欠です。
NTTデータにおいて、活用推進の役割を担ったのがデータ経営推進組織である業務統括本部です。
活用推進の取り組みポイントについて、業務統括本部 大塚 想は「単に“分析をすること”だけではなく、業務プロセスの改善とセットで進めることで、“改善が継続的に回り続ける仕組みづくり”を意識して取り組んだ。」と語ります。
主な取り組みテーマとしては、データ活用の定着化とリテラシー向上、分析基盤とUXの改善、経営管理の高度化の3点です。データ活用基盤の活用推進や社内事例の横展開を通じたデータの民主化を実現し、使われ続けるダッシュボード・分析環境の整備から施策の効果検証まで一気通貫で行います。また価格戦略やパイプライン管理など、経営に直結する領域においてデータ活用を進めています。
これらを通じてデータドリブン経営を“一過性の取り組み“ではなく、”組織に根づく仕組み“として定着させることをめざしています。
データドリブン経営の歩みを支えるこの活用推進の取り組みにおける具体策が
ダッシュボードリンク集の全社公開、テンプレートの提供、ハンズオン研修、相談会です。まずは既存ダッシュボードを見るところから始め、次に自分の業務へ当てはめ、困ったら相談できる。この段階的な導線を用意したことで、データ活用を一部の専門家だけのものにしない仕組みを整えました。
その効果がよく表れたのが、SFAと案件管理システムのデータを統合し、パイプライン総量を可視化した取り組みです。従来は、SFAに蓄積された見込み案件と案件管理システムに蓄積された受注案件が別々に管理されており、全体像を把握しにくいという課題がありました。そこで本基盤上で両者を統合し、営業マネジメント層が着地見込みを早期に把握できるようにしたことで、パイプラインの量と質のバランスを見ながら、営業アクションを前倒しで判断できるようになりました。
図4:データ活用基盤× Salesforce 連携事例
この事例で特徴的だったのは、ダッシュボードを「見る・直す・判断する」という役割ごとに分けて設計した点です。案件を明細レベルで確認し不整合データを洗い出すことで、登録データの誤りを早期に修正できるようにしています。また、予実対比や着地見込みの変動の把握等を通じて、経営管理や営業マネジメントに必要な判断材料を提供しています。
このように「見る・直す・判断する」と役割を分けることで、ダッシュボードが業務プロセスに組み込まれる設計になるよう工夫しています。
NTTデータのデータ活用基盤のこれから
データ活用基盤の今後の展望について、依田は次のように語ります。「今後は、より高度な活用に向けて、データ分析のフロントシステムとして生成AIを活用していくことを考えている。例えばユーザーはAIエージェントに『売上の異常要因を調べて」と依頼するだけで、AIエージェントが各システムのデータやカタログ、分析サービスなどを参照しながら、最適なアウトプットを提示してくれる--そんな形をめざしている。」
図5:データ活用基盤 今後の展望について |生成AIによる示唆・リコメンドとプロセス自動化
このように、ユーザーの「考える・探す・まとめる」といった作業を、AIエージェントが担い、業務における判断とアクションのスピードと質を大きく高めることをめざしています。
こうした構想がすぐに実現するわけではなく、実用化のタイミングはAI技術の成熟度に大きく依存します。
そのため、将来的な活用に備えて、今からメタデータの整備や、データの意味づけ、プロンプト設計に耐えられるアーキテクチャー検討を進めておくことが非常に重要だと考えています。
データ活用基盤は、次世代のAI活用にも対応できるデータ基盤として、今後も進化を続けていきます。
おわりに
NTTデータでは当社自身でのデータ利活用に関する取り組みの中で得た知見や技術力を、お客さまのデータドリブン経営の実現にも生かしていただけると考えております。
本記事でご紹介したデータ活用基盤構築・活用推進におけるノウハウを整理し、実際の導入や運用に活用いただけるサービスとしてご提供しております。お客さまのデータドリブン経営への変革を支援させていただきますのでお気軽にご相談ください。
図6:経営管理アセット紹介


Tableauについてはこちら:
https://www.nttdata.com/jp/ja/lineup/tableau
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