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2024年3月1日展望を知る

2つの事例で見る、コネクティッドカーを中心とした社会変革

運転速度や加減速などの走行データから、AIが高齢者ドライバーの認知力を判断する。一見、自動車メーカーの実証実験に思えるかもしれないが、取り組んでいるのはNTT DATAだ。ほかにも、次世代の自動車を支えるさまざまなシステムの研究・開発を進めている。

めざすのは、「自動車のコネクティッド化による社会変革」。モビリティを中心とした新たなビジネスと社会価値を創出し、社会課題の解決に取り組んでいる。NTT DATAは、どのようなForesight(先見性)を持って、コネクティッド化を推し進めているのか。冒頭の「AIによる認知力判断」を始めとして、実際の取り組み事例をまじえて紹介する。
目次

モビリティの3つの変革

モビリティの変革は、「クルマづくりの変革」、「サステナブルな社会に向けた変革」、「ビジネスモデルの変革」の3つの側面から捉えることができます。

「クルマづくりの変革」とは、エンジニアリングチェーンやサプライチェーンといった、開発や製造、販売などの過程をDXの力で変革していく領域です。「サステナブルな社会に向けた変革」は、コネクティッドカーでサーキュラーエコノミー(循環型社会)の実現を手助けすること。詳しくは、DATA INSIGHTの記事『【業界展望】脱炭素を実現するモビリティ(https://www.nttdata.com/jp/ja/data-insight/2023/1026/)』で解説していますので、よかったらご参照ください。

そして、加速するクルマの電動化や新たなドライブ体験・サービスからはこれまでにないビジネスモデルが生まれ、それにより社会変革が起こる「ビジネスモデルの変革」です。

今回はこうした変革のなか、業界横断で新たな社会価値創出をめざす、2つの具体事例を紹介します。

運転中の挙動からAIで認知機能の低下を判断

1つ目は「運転データを活用した脳の健康状態を推定するAI構築の実証実験」。

この実証実験の背景にあるのは、高齢者ドライバーの死亡事故が増えている現状です。警察庁の統計では、2022年に発生した75歳以上のドライバーが第一当事者となった死亡事故は379件と、2年連続で増加。免許保有者10万人当たりの75歳以上による死亡事故は75歳未満の2.3倍です(※)

また、警視庁が公開している「平成29年中における高齢運転者による死亡事故に係る分析について」には、「死亡事故を起こした75歳以上の高齢運転者は、全受検者と比較して、直近の認知機能検査の結果が第1分類(認知症のおそれ)・第2分類(認知機能低下のおそれ)であった者の割合が高いことから、認知機能の低下が死亡事故の発生に影響を及ぼしているものと推察される」との記載があります。

認知機能の低下に自ら気づいて、運転をしないという選択を取ることができれば良いのですが、実は、認知機能の低下に自ら気付くことは簡単ではありません。認知症として症状を自覚する段階と医学的に正常な段階の間には、MCI(軽度認知障害)という段階が存在しており、MCIは本人や周囲も気付かずスルーされることが多いのです。

そこで考えたのが、明確な症状が現れる前に運転という日常生活で収集可能な挙動から脳の現状の健康状態を推定すること。その結果からドライバーに気づきを与え、健康寿命を伸ばすことも目的にしています。

実証実験では、kmタクシー、NPO法人高齢者安全支援研究会、ゼンリンと業界を横断した皆さんにご協力いただいています。まず、kmタクシーのドライバーで65歳を越えている方々数十人を無作為で選定。速度や加減速状況などドライバーの走行データを中心に、年齢などの基本データ、そしてゼンリンの地図データから、脳の健康状態を推定するアルゴリズムを開発。エーザイが提供するセルフチェックツール『のうKNOW®』を利用して測定した脳の健康度との関連性を検証します。これは、医療機器ではありませんが、パソコンやスマホの簡便なテストを通じて、脳の反応速度、注意力、視覚学習および記憶力といった脳の健康度をチェックできます。NPO法人高齢者安全運転支援研究会からは、検証に向けたデータ収集支援、および分析検証への助言をもらっています。

運転という日常の生活から認知機能の低下に気付けて、早期の治療や安全運転につながる世界をめざし、タクシーだけでなく、物流業界などにも対象を拡大していく予定で、5年後までの商用化を目標に掲げています。将来的には、ヘルスケアなどの多様なデータソースとも連携させながら、健康長寿社会の実現に貢献していきます。

「運転特性データを活用した脳の健康状態を推定するアルゴリズム構築の実証開始」に関する報道発表はこちら:
https://www.nttdata.com/global/ja/news/topics/2024/012400/

『欧州バッテリー規則』を見据えたトレーサビリティープラットフォーム

2つ目は、EVのバッテリートレーサビリティシステムの開発です。背景には、バッテリーのライフサイクル全体におけるCO₂排出量や資源リサイクル率を欧州委員会に開示する『欧州バッテリー規則』への対応があります。

『欧州バッテリー規則』は、2025年から一部義務化が開始される予定です。電池の原材料調達から設計・生産プロセス、再利用、リサイクルに至るサプライチェーンのライフサイクル全体が規定され、カーボンフットプリントの申告義務やリサイクル済み原材料の使用割合の最低値導入、廃棄された携帯型バッテリーの回収率や原材料別再資源化率の目標値導入などが求められます。そのため必要になるのが、バッテリーの原料や製造過程、リユース方法までをトレースできる仕組みです。

そこでNTT DATAでは、EVのバッテリーに関する業界横断エコシステム『バッテリートレーサビリティプラットフォーム』を構築。経済産業省の「令和5年度 無人自動運転等のCASE対応に向けた実証・支援事業(健全な製品エコシステム構築・ルール形成促進事業)」にシステム開発事業者として正式に採択されました。

「サーキュラー・エコノミーを実現するバッテリートレーサビリティプラットフォームを構築」に関する報道発表はこちら:
https://www.nttdata.com/global/ja/news/topics/2023/101600/

今後は、バッテリー単位での情報管理を実現するために、購入ユーザー、解体業者、リユース企業、リサイクラーなど、バリューチェーン上のプレーヤーと情報連携する機能を搭載。業界横断でデータを連携することで、EV向けバッテリーにおけるサーキュラー・エコノミーの実現をめざしていきます。またEV以外にも、サプライチェーンおよびバリューチェーンにおいてデータ連携が必要となるほかのユースケースへの適用についても検討していく予定です。

その他、「モビリティ×商業施設・観光」や「モビリティ×シティ・交通」に関する業界横断の取り組みに関しては、前述した『【業界展望】脱炭素を実現するモビリティ(https://www.nttdata.com/jp/ja/data-insight/2023/1026/)』で詳しく説明しているので、参考にしてみてください。

これからもNTT DATAは、コネクティッドデータを活用し、さまざま業種の皆さまと共創しながら社会変革を推進していきます。

本記事は、2024年1月24日に行われた第17回オートモーティブワールド クルマの先端技術展での講演をもとに構成しています。

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