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2025.10.23技術トレンド/展望

経営層のニーズと組織変革を成功に導く、研修事例と学習効果

デジタル化や顧客ニーズの多様化、競争環境の変化により、迅速な意思決定と柔軟な組織運営が求められている。多くの企業がアジャイル開発やスケーラブルな組織運営に関心を持っているが、「現場だけでアジャイルを回す」ことの限界に直面するケースも少なくない。
NTT DATAは、経営層が率先してアジャイルとDX(デジタルトランスフォーメーション)の本質を理解することが組織変革の鍵であると考えている。そこで実施しているのが、経営層向けのSAFe®(Scaled Agile Framework®)研修だ。
本稿では、研修を受講した経営層へのアンケート結果をもとに、研修に対する満足度および組織変革への影響について紹介する。
目次

1.ビジネスアジリティが求められる背景

市場環境の変化が激しく、予測困難な状況に直面している今、迅速かつ戦略的に対応するスキル、すなわち「ビジネスアジリティ」が求められています。ビジネスアジリティとは、市場のニーズを迅速に把握し、意思決定を俊敏かつ柔軟に行うこと。昨今はビジネスアジリティを向上させるため、アジャイル開発の手法をマネジメントに取り入れる企業も増えてきました。一方で、ビジネスアジリティをどのように導入すればよいのか、果たして自社に適合するのかなど、悩まれている企業も多いのではないでしょうか。

こうした悩みを解決するのが、「SAFe」(※1)です。SAFeは、アジャイル開発とリーン製品開発、システム思考を融合させ、大規模なプロジェクトにアジャイルの原則を適用するフレームワークです。

(※1)ビジネスアジリティおよびSAFeについての詳細はこちら:
トップダウンで実施すべきSAFe®導入によるビジネスの加速 | DATA INSIGHT | NTTデータ - NTT DATA

SAFeを導入することにより、以下のメリットが得られます。

  • 組織全体のビジネス目標と開発者の活動を整合できるため、社員が統一されたビジョンと目標に向けて作業することが可能
  • 複数のアジャイルチームを統括し、全体として連携させるスケーラブルな組織運営が実現
  • 各チームが互いにどこと連携しているのかを確認しながら協力と調整を促進できるため、チーム間の認識齟齬やボトルネックが減少

SAFe導入の成功の秘訣は、トップダウンでアジャイルの手法を組織に浸透させることです。次章では、企業の経営層を対象に、NTT DATAが実施した研修についてご紹介します。

2.アジャイル変革に必要な経営層の意識改革

アジャイルの本質は、「変化に強い組織づくり」です。その第一歩は、経営層の意識改革にほかなりません。チームや担当周辺でのボトムアップ方式では、勉強会を開いても組織全体に浸透させることは難しく、経営層の理解とリーダーシップがなければ、導入効果は限定的となってしまうのです。

アジャイル組織へと変革させるには、まず経営層がトレーニングを受けて、SAFeに対する理解を深めることが重要です。トップダウン方式を採用すれば、強いリーダーシップを発揮し組織横断型でアジャイル変革に取り組むことができます。

2-1.研修の学習事例

NTT DATAは、Scaled Agile, Inc.(SAI社)が認定するSAFe研修に対応(※2)しています。中でも、組織変革に携わる経営層を対象にしているのが、Leading SAFe®研修です。

ここからは、2024年4月よりある企業(以下、A社)の経営幹部と管理職、プロジェクトマネジャーを対象に開催したLeading SAFe研修の事例を紹介します。 A社は、顧客ニーズの多様化や市場変化に迅速に適応するための組織変革を進めており、経営層の考え方や行動原理、組織運営のあり方自体のアップデートを目的にSAFe導入を検討し、「SAFeの体系を経営に取り入れたい」「マインドセットとして組織や人材の運営方法を知りたい」など、Leading SAFe研修に対し高い関心を持っていました。

Leading SAFe研修では、リーン・アジャイルマインドセットを理解し、SAFeの原則を適用したプロジェクトサポート、および変革推進方法を、2日間をかけて習得します。講師はSAI社から認定を受けたNTT DATAのコンサルタントが務めます。お客様の業務を理解するコンサルタントが講師を務めるため、組織内でSAFeを機能させる方法などについて質問をしやすく、理解が深まりやすくなります。

Leading SAFe研修の内容(一部)

  • SAFeの基本概念と構造
  • PIプランニングなど主要イベントの実践理解
  • アジャイルマインドセットの醸成
  • 組織間の連携を強化するコミュニケーションスキル
  • 演習を通じた現場適用イメージの具体化

例えば、PIプランニングについての研修では、全員が顔を合わせて課題や優先順位を確認しながらコミュニケーションを図ります。同じリズムで「計画→実行→レビュー」を回していくため、見落としや抜け漏れなどを発見しやすく、受講者同士が連携の重要性を認識しやすい内容です。

また、受講中にいろいろな疑問を抱くようになるのも、Leading SAFe研修の特徴の1つです。実際に、研修中には以下のような質問が寄せられました。

図1:研修中に寄せられた質問

研修では、こうした疑問点や不明点をクリアにするのはもちろん、受講者が所属する組織ベースでの相談事にも、講師が事例や経験談を交えて丁寧に対応します。研修後は、SAFeの資格取得にもチャレンジできるため、アジャイルや組織運営に関する理解が深まるだけでなく、自身のスキルやキャリア強化にもつながります。

(※2)SAFe Training Class

Register For A Course | Scaled Agile

2-2.部門横断型研修による共通理解の醸成

Leading SAFe研修以外にも、A社ではSAFeの各ロールに合わせたいくつかの研修を開催しました。経営層・管理職クラス、およびサービス企画、システム構築などのさまざまな部門から、経験年数が1年未満の新人をはじめ、20年以上のベテランまでが一堂に会し、ディスカッションや演習に取り組み、組織横断的な考え方を習得しました。

異なる視点や経験を持つ参加者同士が意見を交わすことで、部門間の垣根を越えた共通理解が生まれ、アジャイルの本質をより深く捉える機会となっています。

3.SAFe導入の成功の鍵は、“やり方”ではなく“目的”を考えること

Leading SAFe研修中によく聞かれたのが、「なぜこんなに手順が多いのか?」「部門をまたぐ調整は難しい」「PIプランニングなどの大規模イベントは効果的か?」といった声です。実は、このように疑問が生じたり、違和感を覚えたりすることが重要です。「なぜ?」を重ねることで、SAFe導入の際にどのような障壁があるのかを把握でき、SAFeの本質を捉えて自分事として考えられるようになります。

多くの企業が「やり方を学んで導入」する中で、本質的に成功している企業は「意味(目的)を捉えて運用」しています。“やり方”志向では、SAFeのイベントや役割、ツールといった実践要素に焦点を当ててしまいやすいですが、“目的”を志向することで、フレームワークをただの手順リストにせず、ビジネスアジリティの向上や顧客価値の最大化といった本来の効果を引き出せるのです。こうした“目的”志向の経営者が1人から2人へと増えていくことで、チームそして組織全体でのSAFeの理解が深まり、継続的な価値創出への一歩となります。

4.研修成果が示すアジャイルマインドセットの醸成

A社での研修終了後、受講者に対してアンケートを実施しました。参加者の90%以上がLeading SAFe研修について「現在または将来の業務に役立つ」、さらに、80%以上が、研修で得た知識について「業務に活かせる」と回答しています。

研修への満足度が高く、活用度を評価する経営層のほとんどが、現状に対する危機感を持っており、受講前からアジャイルの知識習得や実務適用に高い意欲を持っていることも分かりました。

図2:研修のアンケート結果

特筆すべきは、「研修を通じて自組織の課題と向き合い、変革への意思が強まった」「アジャイルマインドセットを持つことが経営幹部の重要な役割!」といった回答が複数見られたことです。受講者のSAFeに対する関心は高く、単発の研修ではなく、継続支援型の学習設計を望む声も多数いただいています。

一方で、専門用語や情報量の多さに苦戦する参加者も多く、「概念は理解できたが、実践が難しい」「トップダウンでの導入が必要」との意見も挙がっています。現場を後押しする体制づくりが求められています。

NTT DATAでは、こうした要望に応えるため、エグゼクティブワークショップや勉強会などから SAFeの各種研修を実施するという流れで、段階を踏んで受講できる研修の進め方も実施しています。NTT DATAが認定しているコンサルタントが、お客さまの案件に対して実務でのSAFe実践をサポートしながら、個別支援という形で研修を実施するなども可能です。

図3:NTT DATAがサポートする3つの継続的な取り組み

上記に示したように、NTT DATAは「マネジメント層への段階的な展開」「非開発部門へのアジャイル適用事例の共有」「アジャイル×AIなど、先端テーマとの融合」を3つの柱に、より柔軟で持続可能な企業体質への転換をサポートします。

5.おわりに

SAFe研修の特徴は、経営そのものの在り方を問うという点です。経営層の理解とリーダーシップ、評価制度、組織構造、そして顧客との向き合い方など、すべてがアジャイルと深く関わっており、単なる知識習得にとどまらず、組織全体の変革を促す起点となる可能性を秘めています。だからこそ SAFe研修を活用していただきたいとNTT DATAは考えています。

今後も経営と現場をつなぐ橋渡しとして学びの機会を広げ、真に変革可能な組織づくりを支援してまいります。

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