三井住友海上あいおい生命様

接客の第一印象をAIが評価
効果的なセルフトレーニングでお客さま対応品質の向上につなげる

リーフレット(PDF:1.7MB)

保険会社における営業活動において、いうまでもなく第一印象がきわめて重要な要素になる。笑顔に満ちた対応で親しみやすさや安心感を抱いてもらえれば、生命保険契約の加入に向けた大きな一歩になるだろう。三井住友海上あいおい生命保険は、営業活動を行う社員や代理店の募集人の育成とお客さま満足度向上に向けて、表情や声から第一印象を“見える化”するNTTデータの「Com Analyzer」を採用。セールス役とお客さま役を設定するロールプレイング研修の代替として、一人でもセルフトレーニングできる環境をめざし、本格導入をスタートした。

お客様の課題

  • お客さま対応の品質アップに向け、ロールプレイングをより多くの社員・募集人に実施・習慣化してもらうこと
  • 事務業務を担当していた社員が営業業務にシフトしていく、役割革新施策の展開に伴い、営業活動に効果的な販売トレーニングを行うこと
  • 時間や場所、人に縛られず、セルフトレーニングが可能な研修機会を提供すること

導入効果

  • わかりやすい表示や評価の定量化、ランキングを導入する等のゲーム性を持たせ、楽しみながら何度もセルフトレーニングできるサービスを導入
  • AIが短時間で第一印象を判定するため、トレーニングを効率的・効果的に推進できる土壌を整備
  • スマートフォンのカメラで自身の第一印象を評価できるので、いつでもどこでもロールプレイングを実施可能に

本稿に登場するサービス

Com Analyzer

話し手の映像を解析して、表情、話す速度、声の大小・高低といったいわゆる“ノンバーバル”の要素をアイコンで評価。そこから導き出される「親しみ」「落ち着き」「熱意」を100点満点で評価するほか、第一印象として相手に伝わる感情もグラフで表示する。

ケーススタディ

導入の背景と課題

お客さま満足度アップに向けて必要なロールプレイングが実施されにくい現状に危機感を覚える

三井住友海上あいおい生命保険では、お客さま満足度アップに向けて対応品質を上げるため、人と人が一対一で向き合い、ロールプレイング形式での販売トレーニングを取り入れている。

ただ、ロールプレイングは当然ながら相手を必要とする。研修内では講師役がいるため問題にならないが、参加者が各職場に戻れば、先輩や上司をつかまえロールプレイング形式での販売トレーニングを実施することは難しく、なかなか定着していなかった。

加えて、同社では営業事務の集中化を始めており、これまで事務を担当していた社員に営業の仕事を任せるため、販売トレーニングの必要性が高まっている。

既存社員・募集人の対応品質向上と、新規に営業を担う社員の育成。この2つの課題が、営業教育担当者の頭を悩ませていた。「販売トレーニングを効果的に行うため、セルフトレーニングが可能な研修ツールを求めていました」。同社 営業教育企画部 教育企画グループの二見 真樹氏はそう語る。

三井住友海上あいおい生命保険株式会社
営業教育企画部
教育企画グループ
課長代理
二見 真樹 氏

選定ポイント

従来の人間による評価とAI評価との共通性に期待し実証実験をスタート

2017年6月のこと、同社はNTTデータからITを活用したお客さま対応品質向上についての提案を受けた。

NTTデータが提案したのが、動画に映った話し手の外見(表情と声)をAIで解析し、第一印象を可視化する「Com Analyzer」というサービスである。「Com Analyzer」は、顔の筋肉の動きをトラッキングしてデータ化し、表情を特定したうえで「喜び」「悲しみ」「怒り」「驚き」といった感情を認識。さらに、話す速度と声の大小・高低から話し方を識別する。こうしたデータを数値化し、総合的な第一印象を見やすい形の評価レポートで提示。これまで難しかった対面チャネルでのマーケティング分析にも寄与するツールだ。

AIによって人間の外見から想定される第一印象を見える化し、それをもとに対応品質を向上させていくプロセスが、ロールプレイングのトレーニングで研修対象者を客観的に評価する過程と似ていることに着目したという。

AIとデジタル技術を活用したこのサービスによってロールプレイングを代替できるなら、まさに課題を解決するソリューションになるのではないか。同社ではその考えの下、NTTデータとともに集合研修の場などを使って実証実験を開始した。

「とはいえ、当社において、AIを業務の中で活用することがほとんどなかったので、AIを使ってどこまでできるのかという不安もありました」と二見氏は話す。実証実験は、いわば半信半疑の状態で2017年冬にスタートした。

導入の流れ

実際の運用環境を試行錯誤の末に整備 ユーザーがわかりやすい表示方法も追求

2018年3月までに実施されたこの第1次実証実験では、まず、従来のロールプレイング研修で人が話し手の外見に対して行う評価と、「Com Analyzer」が行う評価との間に相関関係があるかどうかを検証した。つまり、「Com Analyzer」がはじき出す数値に実際的な意味があるかどうかを確認したわけだ。

同社で撮影した話し手の動画をNTTデータで分析し、評価レポートを返す。その結果を検証したところ、人とAIで共通する傾向が見られた。

第1次での一定の成果を受け、2018年8月から第2次実証実験が開始。複数の集合研修を対象に実施したこの第2次では、NTTデータも同行し撮影サポートや動画分析を行うなど、研修現場での運用面に関する課題洗い出しに注力した。

「カメラで話し手の動画を撮影する際、角度や光の加減によって表情の認識度が落ちる問題が起きました。そこで撮影条件をマニュアル化し、分析に適した動画を撮影できることを確認しました。同時に、ロールプレイングを試行した受講者にアンケート調査したところ、AIによる評価に対して満足を感じていることもわかりました。」

ちなみに、当初の評価レポートは「笑顔が少ないです」「声が小さいです」といった文章で表示されていた。しかし文章では評価の意味が伝わりにくいと感じた二見氏は、NTTデータと話し合い、評価の表示方法を笑顔マークなどのアイコンに変更するなどシンプル化を進めた。その結果、受講者には文章よりもダイレクトに評価が伝わるようになったという。

一方、この第2次で、AIによる判定の基となるデータ作成のため、150を超える動画をひたすら視聴し、一つひとつに評価点を付けていく作業が大変だったと振り返る。「とにかく量が多いうえ、見る人間によって着眼点が異なることもあったので、試行錯誤を重ねながら進めていきました」と二見氏は言う。

年を越して2019年初めに第2次実証実験が終了し、2019年5月27日から導入をスタート。「Com Analyzer」にとって、同社が晴れのファーストユーザーとなった。

導入効果と今後の展望

楽しみながら繰り返し試せる要素を追加 これまでなかった“気づき”が得られる

導入後、まずは営業教育企画部内でトライアルを実施。この段階で、使用するスマートフォンの機種によりカメラの設定方法が異なる点、動画アップロードに要する時間が通信状況に左右される点が新たな問題となった。主な機種ごとの設定方法をマニュアル化し、複数機種への対応を図った。NTTデータでは機種に依存しない撮影方法の開発を進めている。また、通信状況の問題に対してはモバイルルーターの導入によって解決した。

さらに、ランキング機能を付けたいという要望をNTTデータに出したという。「ロールプレイングを繰り返し実施してもらうため、何度でも試したくなるような遊び心、ゲーム性も必要だと思いました。ランキング機能が付いたことで、習慣的に利用することへのモチベーションが上がる効果を実現できたと考えています。数分で結果が出るところも、手軽に試してみようという動機につながりやすいと感じました」

実際に募集人に試用してもらったところ、「気づきにくい点が数値で評価され、改善につながる」といった評価に加え、「もっといい点数を取りたいと思った。継続的に実施すれば自身のレベルアップになる。お客さま訪問前の印象チェックにも使いたい」という感想も聞かれたという。対象は主に40代、50代のベテランだったが、AIの評価に対して「自分は笑顔が足りないと初めて知った。お客さまへの対応向上につながる」という反応もあり、それぞれが学びを得たようだ。

トライアル期間を終え、今後、活用状況・費用対効果等を見据えながら全国の社員・代理店への本格導入の検討に入る。二見氏は「相手がいなくても、また時間と場所も選ばずにロールプレイングをセルフトレーニングできるようになったのはやはり大きなメリットです」と今回の導入を評価。今後は従来のロールプレイング研修をメインとしつつ、「Com Analyzer」も積極的に活用していきたいとしたうえで、次のように期待を寄せた。

「より多くの人に使ってもらうため、これからも改善を続けていきたい。表情と声だけでなく身ぶりや視線なども評価対象に追加していくとのことなので、楽しみにしています。さらには口ぐせなど、言葉の部分もAIで評価できるようになれば嬉しいですね。AIはわからない部分が多かったのですが、NTTデータには一つひとつ相談に乗っていただき、丁寧なサポートに感謝しています。これからもお客さま満足を向上させるため、このサービスを一緒に鍛えていきたいと思います」

NTTデータとしても、現在は単一尺度での評価だが、今後は顧客の属性に応じた尺度の選択、シチュエーションに応じた指標の出し分けなど、より実際の営業シーンに近づけたロールプレイングを可視化できるように、同社と協力しながらサービスの高度化を図りたいと考えているという。また、身ぶりや手ぶり、言葉の部分などに可視化の対象を拡大し、「人をデジタルで理解する」レベルにまで高めていくこともめざして取り組みが進められている。

お客様プロフィール

お客様名

三井住友海上あいおい生命

本社所在地

東京都中央区新川2-27-2

会社設立

1996年8月8日

事業概要

生命保険4社の合併を経て、2011年10月にMS&ADインシュアランス グループの国内生保事業の中核会社として設立。高齢化に伴う介護・医療負担増をはじめとする社会環境の変化を受け、多様な保険商品を発売する。2018年度スタートの中期経営計画ではSDGs(持続可能な開発目標)を道標ととらえ、「健康で安全なくらしを支える生命保険会社」の旗印のもと、お客さま満足と企業価値の向上に向けて取組みを進めている。

ウェブサイト

https://www.msa-life.co.jp/