2011年に、「個人情報は第二の石油である」と言われてから、個人情報の活用は飛躍的に進みました。
その結果、次に買うべき本のレコメンドや、以前に買った洋服にあう洋服のレコメンドなど、私たちの生活は豊かになりました。
その一方で、突然の勧誘電話や、DMなど、自分の知らない人や企業に、自分のことを知られている怖さも経験するようになってきたと思います。
それに伴い、こうした個人情報を企業ではなく、個人で管理するべきだという考え方が出てきました。
今、私たちは、ちょうどその移行期にあると考えています。

図1:個の影響力の拡大

情報銀行とは

情報銀行とは、個人が利用してよい企業や目的を決めたうえでデータを提供し、データを活用した企業が見返りとして個人に合わせたサービスや商品を用意し、メリットを提供する枠組みです。
従来も企業は顧客から取得したデータをマーケティングに活用してきましたが、得られる情報が限られることや情報の不確実性が課題となっていました。情報銀行は、個人の同意に基づいて提供されたデータを蓄積し、複数の企業や機関が共有することで、精度・ボリュームともに高い情報を活用したビジネスの発展に寄与します。
また、情報銀行を経由して、データの提供をすることで、個人にとっては、自分のデータの流通を、自らコントロールすることが可能になると言う大きなメリットがあります。
銀行が、「産業の血であるお金」を流通させることで、新しい価値の創発を支援する機関なら、情報銀行は、「産業の知であるデータ」を流通させることで、新しい価値の創発を支援する機関となります。

図2:情報銀行は、データを「融資」することで、産業を育てるしくみ

情報銀行では、個人とのデータ活用に関する契約等に基づき、PDS(※)等のシステムを活用して個人のデータを管理するとともに、個人の指示又は予め指定した条件に基づき個人に代わり妥当性を判断の上、データを第三者(他の事業者)に提供します。重要なことは、あくまでも個人が自らのデータの流通をコントロールできるということです。

※ パーソナルデータストア。他者保有データの集約を含め、個人が自らの意思で自らのデータを蓄積・管理するための仕組み(システム)であって、第三者への提供に係る制御機能(移管を含む)を有する

図3:企業と個人のデータ共有イメージ

図4:情報銀行に登場するプレイヤー

NTTデータの提供サービス

今後のパーソナルデータ流通の形態としては大きく三段階あると考えています。情報銀行が立ち上がり始める第一世代、情報銀行間をまたぐ流通が実現する第二世代、そして最終形として、"My AI"という、情報銀行などに集められ管理されたデータを元に、AIが自分の代わりに判断を下す世界観が第三世代です。

現在は第一世代ですが、今後、第二世代として、情報銀行間を跨いだパーソナルデータ流通により、さまざまな業界におけるパーソナルデータを掛け合わせることにより、新たな価値を個人に提供することが期待されています。こうした新たな価値の創出を目的に、NTTデータでは、個人の許諾の下で、パーソナルデータを活用した新たなサービスを検討する「MesInfos Japan™」(メザンフォ ジャパン)というコンソーシアムを設立し、現在、金融、通信、流通、インフラといった様々な業界から企業が参加しています。

図5:パーソナルデータ流通の形態

また、NTTデータでは、この第二世代における情報銀行間を跨ぐ共通的なプラットフォームサービスとして、「My Information Tracer™」(以下、mint)を提供します。

mintは、情報銀行に共通な機能を提供し、情報銀行サービスを提供するパーソナルデータストア事業者のシステム開発を容易にします。その共通的な機能の中では、共通IDによる統一的な認証機能を提供すると同時に、情報銀行サービスが利用する認証サービスや本人確認サービスと連携を行い、データ提供事業者、データ活用事業者、パーソナルデータストア事業者(情報銀行)を一元的につなぎます。

図6:mintの実現モデル

さらに、mintとサービス連携可能な同意管理サービスとして、下図のようなサービスの提供を目指し、実用化に向けた取り組みを行っています。

図7:NTTデータの同意管理サービス(実用化を目指し検討中)

  • 「MesInfos Japan」、「My Information Tracer」は日本国内における株式会社NTTデータの登録商標です。

令和2年の個人情報保護法の改正により、企業は、個人からの個人情報開示請求に、「電子的に」対応しなければならなくなります。また、個人から、データの利用停止、削除を求められる可能性が、これまでよりも増えてくることが予想されます。そのような状況で、企業としては、「どのお客様の、どんなデータを、いつ、どのような利用目的により取得したのか?」ということをはっきりさせる必要が出てきます。こうした対策を、きちんと消費者に提示することが、「データ活用が出来る企業」として認知される重要な要因であると考えます。データを活用した新しいビジネスに乗り出すことは、データをきちんと扱える企業として、自社のシステム、運用を整えていく姿勢を示した後に、実現出来るのではないでしょうか。

情報活用ビジネスを検討されるみなさまへ

弊社は、欧州を中心に運営されているMyDataGlobalのアクションにいち早く(2016年から)参加するとともに、フランスでの実証実験「MesInfos」にも参加し、パーソナルデータを活用するビジネスの最先端を知っています。
「自社のデータをどのように整理すればいいのか?」「データを活用するビジネスをするために必要な要件はなにか?」「情報銀行ビジネスに参入したいが、まず何から始めればいいか?」と、パーソナルデータ関連ビジネスに悩んでいる企業の皆様を支援することが出来ます。
一緒に新しい世界を創造しましょう。

レポート&コラム

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個人個人がサーバーになる?これからのデータ管理のあり方

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花谷 昌弘

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#5 デジタル社会における安心・安全なデータ管理とは? ~ユーザーメリットを具体化する「情報銀行」のエコシステム作り~

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