そもそも「人工知能(AI)」をどうとらえるべきか
いま最も注目されているテクノロジーの1つに人工知能(AI:Artificial Intelligence)があります。AIは、一般的には「人が実現するさまざまな知覚や知性を人工的に再現するもの」という意味合いで理解されています。
しかし実際には、AIに対して一意に決まった定義がなされているわけではありません。コンピューター・サイエンスや認知科学、医学、心理学、さらには哲学にいたるまで、今もさまざまな立場で論じられ続けている領域です。
AGI(Artificial General Intelligence:汎用的人工知能)はまだ存在しない
AIに対する最も大きな誤解が、「あらゆる問題に応えられる(答えられる)賢いAIがすでに存在する」というものです。現在のAIに人間の認識能力や常識、感情なども含めた森羅万象のすべてを理解させられるわけではなく、「何でもできる」存在ではありません。
あらゆる課題に対応できる汎用的なAIを実現することは研究者にとって大きな目標であり、さまざまなアイデアが提唱されていますが、ブレークスルーの決め手となるような手法は見つかっていません。その意味でもAIはまだ進化の途上にあります。
特定領域では人間を凌駕する能力を発揮する
もちろん、だからといって現在のAIが実用レベルに達していないわけではありません。何でもできる汎用的なAIはまだ存在しないと述べましたが、裏を返せば、範囲が限定された特定領域においてAIは、人間をはるかに凌駕する卓越した能力を発揮するケースがあります。たとえば医療の世界では、平均的な医師を超える診断を行えるAIが登場しています。また金融分野では超高速に超高頻度の取引を行うアルゴリズム取引が市場の半分以上の取引を実行していると言われます。
ディープラーニングによってAIの精度が大幅に向上
AIは、専門家が持つ経験則をルールベースに展開して人の知的作業を支援する「第一世代」から、統計/探索モデルによって最適解を発見する「第二世代」を経て、脳モデルに基づき認識性能を飛躍的に向上させる「第三世代」へシフトしています。
昨今、AIが急速に注目を集めるようになったのは、まさにこの第三世代のテクノロジーが出現したことにあります。人間の脳神経回路を参考にしたアルゴリズムである「ディープラーニング」と呼ばれる手法はその代表です。従来の機械学習のように、データサイエンティストが特徴量(※)を設計しなくても、コンピューター自身が膨大なデータを読み解き、そこに隠れているルールや相関関係などの特徴を発見します。人間と同じように帰納的な推論を行うことで、自律的に“意味”や“概念”をもあぶり出していくのです。さらに、その後も継続して学習を続け、賢さに磨きをかけていきます。
ディープラーニングによってAIの精度は大きく向上したのです。
※モノ・事象等の識別、予測などにおいて有用な情報であり、データ項目からの選択や、複数データ項目から組み合わせより設定する
世代を超えた多様なAIの手法を適材適所で活用
ただし、単純に第三世代のAIが第一世代のAIよりも優れているわけではありません。目的や用途によって最適な手法は異なるのです。
最近よく話題になるAI将棋を例にとって考えてみましょう。何手も先の展開を読み、対戦相手の意表を突くような妙手をあみだすためには機械学習やディープラーニングの手法が必要です。しかし、将棋の基本的なルールや定石などをAIに覚えさせるのは、わざわざ学習させるよりも最初からルールベースとして登録したほうがはるかに効率的です。
このように第一世代から第三世代の手法を適材適所で組み合わせ、さらにはモバイルやウェアラブル、IoT、アナリティクス(統計分析)などのシステムともシームレスに融合しながら、さまざまな業務課題に対応するソリューションをデザインしていくことが、これからのビジネスにおけるAIへの向き合い方であり、活用法となるのです。
NTTデータが考える企業におけるAI活用とは
急速な勢いで進化を続けるAIをいかにビジネスに活用するか?
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