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2021年7月2日INSIGHT

牧場でみつけた多様性と働きがい ~つながりが生む活躍の場~

栃木県那須町に、森を活用して酪農を営む「森林ノ牧場」がある。そこでは、障がい者雇用に取り組むNTTデータだいちの社員7名が働く。なぜIT企業のグループ会社が農業に取り組むのか。自然の中で、仲間や牛たちと真剣に向き合う社員たち。そこにはNTTデータに息づくダイバーシティ&インクルージョンの理念があった。
目次

牧場との出会いで生まれた活躍の場

梅雨の晴れ間から差す太陽の日差しのもと、汗だくになりながらミルクを準備する。吸い口がついた大きなバケツを差し出すと、子牛は一心不乱に飲み干す。生後2か月の小さな子牛とはいえ腰の高さほどの大きさにもなる。

ミルクをあげるのは、NTTデータだいちの小澤 耕心と磯 剛広だ。
森を切り開いた山地のなかにある森林ノ牧場は、ジャージー牛を放牧し、乳製品の加工・販売まで一貫して実施している。搾りたてのミルクで作るソフトクリームが人気の牧場だ。
牧場ではNTTデータだいちの社員7名(うち障がい者5名)が働き、子牛の世話、えさの管理、糞尿の掃除。そして乳製品の加工まで、幅広い業務に従事している。

NTTデータだいち 磯 剛広

NTTデータだいち 磯 剛広
乳製品の加工業務では特に衛生面に配慮が必要だという
「人の口に入るものなので埃や髪の毛など異物が混入しないように心掛けています」

“今ではだいちのメンバーがいないと成り立たない”

森林ノ牧場を運営する山川将弘社長はNTTデータだいちの社員とともに働くことについてこのように語る。

山川氏NTTデータだいちのメンバーとは牧場の立ち上げ時から一緒に働いています。最初は子牛の世話と糞尿の掃除だけをお願いしていましたが、そこから少しずつ担当業務を拡大していきました。

私は酪農に詳しくても、障がい者雇用の専門家ではありませんので、お願いしたい仕事が彼らに合うかがわからない。そこはNTTデータだいちの神山所長がうまく翻訳し、メンバーそれぞれに適した仕事に落とし込んでくれたことで、任せる業務の幅を広げていくことができました。今ではだいちのメンバーがいないと成り立たない状態です。

多様な業務を任せる秘訣について、NTTデータだいち那須事業所の神山守所長はこう話す。

神山氏個人個人と向き合って、仕事を考えています。メンバーとのかかわりで心掛けていることは、笑顔で働けるような環境を用意すること。仕事のやりがいを感じてもらうために重要なのは、周りのサポートがあって成り立っていることを自覚することです。

そのためには一人ひとりの実力も必要ですが、何よりチームワーク。誰がダメ、悪いではなく、どうやったらうまくいくかをチームの皆で考えてもらっています。

障がい者とともに働く、ということ

牧場の立ち上げからすでに10年経過したが、NTTデータだいちの社員は退職した者はいないという。なぜこの那須の地で全員が生き生きと働けているのか。
森林ノ牧場という環境が互いを必要とすることを前提として作られたからだと山川社長はいう。

山川氏森林ノ牧場では真の田舎暮らしの実現を目指しています。そのためには人と人とのつながりを作り、働くスタッフや牛、自然の価値を引き出すことが必要です。

人とのつながりとは、“人の役に立っている”“誰かが必要としてくれている”と本人が感じることだと思います。それが仕事の楽しさにもつながってくると私は考えています。

牧場に併設されたカフェ
牧場に併設されたカフェ

牧場に併設されたカフェ

「つながり」はこの那須での事業にかかわりが深いコンセプトだ。自然を活用した酪農モデルの「森林ノ牧場」、自然とのかかわりを大切する高齢者サービス施設「ゆいまーる」、そして障がい者雇用に関する地域課題に取り組む「NTTデータだいち那須事業所」の三者が連携することが事業開始当初から前提だったという。

ゆいまーるの高齢者が牧場で牛と親しみ、牧場で働くNTTデータだいちのメンバーが、ゆいまーるで清掃業務を行う。互いにかかわりあう環境を作ることで、自身が必要とされていることを感じることができる。結果的に10年以上誰も辞めない、充実した職場環境を実現している。
もちろん、仕事を任せあうにあたっては、苦労もある。

山川氏だいちのメンバーは、障がいをもっていることもあり、昨日までできていたことが突然できなくなることがあります。今でもそれには驚きますが、すべてコミュニケーションのきっかけになると思って接しているんです。淡々と仕事をお願いしていても10年続かなかったでしょう。

また、そうしたコミュニケーションから得られる新たな気づきもあるという。

山川氏たとえば牛への餌やりの際、僕たちは秤のメモリを読んで必要な量を量ります。ですが数字を読むことが苦手なメンバーは、メモリに印をつけて間違えずに作業をしてくれる。僕らもその方がパッとみてわかりやすいし、ミスが減ります。働き方も考え方もそれぞれ異なり、同じものをみていてもその姿は違ってみえているだろうし、それが面白いですよね。

1日2回、牛たちに大量の干し草をあたえる

1日2回、牛たちに大量の干し草をあたえる

ミルクタンクの清掃は商品の品質を左右する重要な業務だ

ミルクタンクの清掃は商品の品質を左右する重要な業務だ

多様性を尊重し、支えあう

2008年7月に設立したNTTデータの特例子会社「NTTデータだいち」は、障がいのある社員が能力を存分に発揮できるよう、さまざまな就労機会を創出している。
農業事業のほかには、IT企業のグループに属する強みを活かしたITサービス事業や、NTTデータ社員をサポートするオフィス事業がある。総勢264名、うち204名の障がいのある社員が活躍している。
NTTデータだいちのこれまでの取り組みについて、菅家裕社長はこのように語る。

菅家氏NTTデータグループは、働く一人ひとりの多様性を尊重することにより創造力を高めていくことを、ダイバーシティ&インクルージョンの柱に据えています。また、グループの企業理念にある「より豊かで調和のとれた社会の実現に貢献する」ことは、「決して取り残される人がいない世界をつくる」ということだと私は考えています。

助けあう・支えあう文化や多様性が生むアイデアで、グループ理念に直接・間接に貢献したい。この点を大事にしながらNTTデータだいちは雇用を拡大してきました。

NTTデータだいちのオフィス事業では、豊洲および札幌事業所の社員が、名刺印刷、ICカード発行、抗菌除菌の拭き上げ、あん摩マッサージ指圧師資格をもつ社員のマッサージサービスなど、オフィスで働く人々を支える業務に従事している。おそろいのポロシャツが彼らのトレードマークだ。
また、ITサービス事業では、HP制作・デザイン・運用を行う。重度の身体障がいのある「eスタッフ」と呼ばれる全国各地の社員が、10年以上前から完全在宅勤務を実現している。在宅と出社の社員同士の協働にも取り組むなど、多様な障がい者が助け合って働ける環境づくりに取り組む。

菅家氏森林ノ牧場だけでなく、NTTデータだいちの障がい者が活躍するフィールドを広げていきたい。多様性のある職場には魅力があります。その魅力で多くの人に牧場を訪れていただき、新たな活躍機会を創っていきます。
また、NTTデータグループ内にも、自然相手の事業に取り組むことで得られる価値観や気づきを、もっと伝えていきたいという想いで取り組んでいます。

NTTデータだいちの企業理念と行動指針

NTTデータだいちの企業理念と行動指針

牧場の物語を届ける新たな挑戦

菅家氏那須事業所の社員にとってNTTデータは遠い存在でした。そこでまず、グループの仲間同士が「つながり」を意識するような仕掛けづくりを進めていく計画です。

21年7月1日から新たに、グループ内イントラネット経由で森林ノ牧場の商品が購入できる取り組みを開始。ミルクなどの商品には、NTTデータだいち社員からのメッセージカードが添えられる。

菅家氏カードとWebサイトは、「eスタッフ」がデザイン・制作してくれました。カードの印刷にも、普段名刺印刷に携わる社員が関わっています。乳製品の美味しさとともに、NTTデータだいちの物語をグループのみなさんに感じてもらえると思います。

那須で働くメンバーも、自分たちが携わった仕事・製品が、NTTデータ社員の手元に届くことで仲間を意識できますし、那須を訪れる人が現れて、声をかけてくれたなら嬉しいです。

NTTデータだいち社員が制作したメッセージカード

NTTデータだいち社員が制作したメッセージカード

将来的には、NTTデータ本社のある豊洲で、森林ノ牧場のソフトクリームとミルクを提供するカフェの開設も目指しているという。グループで働く人々とだいち社員のつながりが豊洲にも新たに生まれ、森林ノ牧場での事業も大きくできる考えだ。

菅家氏21年4月から2ヶ月間、「だいちCafe」の試行運用を実施しました。コロナ禍で難しい状況でしたが、社員のニーズを把握することができ、手応えを感じています。はじめは接客に不安を感じていたスタッフも、さまざま工夫をしながら働いてくれました。コロナ収束後に、社員が仕事の気分転換に訪れる癒しの場を提供できるよう再挑戦したいと思います。

だいちカフェ試行時のメンバー はじめての接客業務で緊張したが、美味しいと声をかけてもらえることに喜びを感じたという
だいちカフェ試行時のメンバー はじめての接客業務で緊張したが、美味しいと声をかけてもらえることに喜びを感じたという

だいちカフェ試行時のメンバー
はじめての接客業務で緊張したが、美味しいと声をかけてもらえることに喜びを感じたという

那須の牧場から学ぶ「つながり」の大切さ

“自分の携わった商品がみなさんの手に届き、みんなが笑顔になることが、私にとって働く喜びです”
小澤 耕心は筆者に笑顔でこう語ってくれた。その表情には自身の仕事に対する誇りがあふれている。

NTTデータだいち 小澤 耕心

NTTデータだいち 小澤 耕心

生き生きと働く、働きがいは、関わる仲間たちとの“つながり”から生まれる。そこには障がいの有無など関係はない。自分らしく働ける環境は、企業と社員にとってはもちろん、そこから生み出される価値が地域や社会に還元されていくことで、サステナブルな社会が形成されていく。

これこそが、新しいしくみや価値で社会に貢献する、NTTデータ流のダイバーシティ&インクルージョンのかたちといえるだろう。

森林ノ牧場株式会社

2009年に立ち上げた森林ノ牧場は、無印良品の系列「Café&Meal MUJI」やサマンサタバサのカフェでのソフトクリーム提供や、三つ星レストランで牛乳が使用されるなど、高い評価を受け事業を拡大。2021年中に第二牧場の開設を計画している。「田舎で暮らすをつくる」牧場として、NTTデータだいちのメンバーと発展をめざす。

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